買い物弱者への支援策 「必要」市町村の86% 農水省調査2022年4月5日
農林水産省は2021(令和3)年度の「食料品アクセス問題」に関する全国市町村アンケート結果を3月31日に公表した。
全国の市町村(東京都特別区含む)1741のうち1212市町村から回答を得た。
食料品の買い物が不便や困難な住民に対して「対策が必要だ」と回答した市町村の割合は86.4%だった。2015(平成27)年の81.0%から年々増加傾向にある。このうち実際に行政による対策が実施されているのは73.4%で昨年の73.2%から増加した。
農水省は、新型コロナウイルス感染症の拡大による外出自粛で食料品の購入に影響が出たことが買い物弱者の増加や顕在化につながっているとしている。
対策が必要だと考える割合は小都市で高く、89.9%とほぼ9割となっている。対策を必要とする背景は都市の規模に関わらず「住民の高齢化」がもっとも多く、全国で92.2%となっている。次いで「地元小売業の廃止」(67.3%)、「中心市街地、既存商店街の衰退」(50.3%)となった。
また、対策を必要とする背景として、大都市では「助け合いなど地域の支援機能の低下」が37.5%と高く、小都市では「公共交通機関の廃止等のアクセス条件の低下」が40.2%と高い。
対策を実施していない理由として小都市では「どのような対策を実施すべきか分からない」が25.6%、「財政上の問題から対策を実施できない」が25.6%となっており、中山間地域など小規模な行政では厳しい状況がうかがえる。
行政が実施している対策は「コミュニティバス、乗合タクシーの運行等に対する支援」が83.7%ともっとも多く、2014年にくらべて10ポイント増えた。次いで「移動販売者の導入、運営に対する支援」が30.3%、「空き店舗等の常設店舗の出店、運営に対する支援」が29.2%、「宅配、御用聞き・買い物代行サービスに対する支援」が26.0%となった。
都市の規模による違いがあり、小都市では「コミュニティバス、乗合タクシー」が87.2%、大都市では「宅配、御用聞き・買い物代行サービス」が50.0%と高い。また「移動販売者の導入」や「朝市、青空市など仮設店舗への支援」も大都市で高い。
これらの対策によってカバーできている割合は「30~60%程度」と回答した市町村がもっとも多い。
行政の対策実施手法は、民間事業者への費用補助や助成金での支援がもっとも多い。
民間事業者が参入している市町村の割合は70.9%で増加傾向が続いている。内容別にみると「移動販売車の導入・運営」がもっとも多く68.9%、次いで「宅配・御用聞き・買い物代行サービス」(63.8%)となっている。
買い物弱者支援に参入している組織は、全体では「株式会社などの営利団体」68.4%、「生協や協同組合など」45.5%となった。
調査では自由記載欄もある。買い物弱者対策を必要とする背景として、中山間地域における小売店の廃業、移動販売事業者の撤退、高齢者の情報リテラシーの低さを挙げる声もあった。
対策を実施するうえでの課題としては、買い物アクセスを統括する行政内部の部局、政策の方向性、施策提案が定まっていないことや、対策を必要とする住民がどの程度いるのか、実態を把握できていないという意見があった。また、プッシュ型の対応だけでは限界があるため、「買い物困窮者が自ら相談等のアクションを起こすプル型支援の重要性」を指摘する声もあった。
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