ロシア侵攻でウクライナから世界への穀物輸出大幅減 米国農務省需給見通し2022年4月12日
米国農務省(USDA)の2021/22年度の主要国の穀物・大豆に関する需給見通しについて農水省が11日に公表した。
米国農務省は現地時間4月8日に発表した。
小麦の生産量はEUで引き下げられたが、アルゼンチンなどで引き上げられ生産量は7億7883万tと史上最高の見通し。一方、消費量はインドでの食用需要の引き上げで7億9108万tと史上最高の見通しと発表した。
生産量は消費量を下回り期末在庫率は前年に比べて2ポイント下がり35.2%の見通しとなった。
ただ、輸出量はロシアによる侵攻で黒海の港湾が封鎖されているためウクライナで100万t下方修正となった。EUからの輸出も下方修正された。
小麦のシカゴ先物価格はロシアのウクライナ侵攻で3月7日には史上最高の1ブッシェル14.25ドルに値を上げた。その後は、黒海地域の輸出が混乱しているものの、米国農務省が発表した作付意向面積が前年度にくらべて増加したことから値を下げて、3月末現在、同10ドル前後で推移している。
トウモロコシの世界の生産量はブラジルの引き上げで12億1045万tと前年比7.5%増の史上最高の生産量となる見通しだ。一方、消費量は11億9715万tで史上最高となる見通し。生産量は消費量を上回るため期末在庫量は前年度を上回る。期末在庫率は0.1ポイント減の25.5%の見込みとなっている。
ただし、輸出量はウクライナで450万t下方修正され、世界全体で下方修正された。
シカゴ先物価格は2月中旬から3月上旬にかけてウクライナ情勢が緊迫するなか、ラニーニャ現象にともなう高温・乾燥による南米の減産懸念、原油価格の上昇からエタノール仕向け増を見込み、1ブッシェル7ドル台半ばまで上昇した。
その後、ロシアのウクライナ侵攻が深刻化、原油価格も上昇しており、また、米国農務省発表の作付意向面積が市場の予想を下回るものだったことからほぼ横ばいで推移し、3月末現在、同7ドル台半ばで推移している。
米の世界の生産量はインドネシアで収穫面積の引き下げなどで下方修正となったが、5億1303万tと前年度比0.8%増の史上最高となる見通しだ。消費量は5億1119万tで史上最高となる見通し。生産量が消費量を上回り期末在庫量は1億8882万tと史上最高となる見通しだ。
ただ、期末在庫率は消費量が増える見込みのため、前年度より0.2ポイント減の36.9%となる見通しだ。
米の価格(タイ国家貿易取引委員会でのFOB価格)は、2021年初頭の1t550ドル台から年末には同400ドル前半へと下落した。しかし、今年1月に入りアフリカをはじめとしたタイ米への強い需要とバーツ高で450ドル台前半に値を上げた。その後、バーツ高で海外からの需要が減少し430ドル台まで下がった。
3月に入りロシアのウクライナ侵攻が深刻化するなかでも、米については新規の需要が乏しく、ほぼ横ばいで推移している。ただ、3月下旬からはアフリカ諸国や中東からの需要で値を上げ、3月下旬現在では440ドル台前半で推移している。
大豆の世界の生産量はブラジル、パラグアイで生産量が引き下げられたことから、対前年度比4.6%減の3億5072万tの見通し。消費量は中国の搾油需要と輸入量が引き下げられ、対前年度比0.1%減の3億6188万tの見通しとなった。
生産量が消費量を下回るため期末在庫率は3.7ポイント減の24.8%となる見通しだ。
大豆のシカゴ先物価格は2月下旬に南米産地の降雨予報などで1ブッシェル15ドル台後半に下がったが、ウクライナ情勢の緊迫、南米の高温・乾燥によるさらなる減産の懸念、南米機関の大幅な減少見通しなどと植物油価格全体の上昇で17ドル台前半に値を上げた。
ただ、3月末の農務省の作付意向調査が市場予想を上回る結果だったことから、16ドル台前半で推移している。
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