国際農研 最優秀論文賞を受賞 少量窒素で収量維持の小麦研究に世界が評価2022年4月20日
国際農研などが開発した少ない窒素肥料で生産性を維持できる小麦の新品種についての論文が、米国科学アカデミー発刊の「米国アカデミー紀要(PNAS)」から2021年の最優秀論文賞を受賞した。PNASは科学全般に関する論文を年間3000本以上掲載しており世界でもっとも引用されることが多い総合科学誌の1つ。この研究成果は「みどり戦略」にも位置づけられている。
圃場試験の様子
国際農研が開発したのは窒素肥料の量を減らしても高い生産性を示す生物的硝化抑制(BNI)強化小麦。
作物の栽培には窒素肥料が欠かせないが、農地にまかれた窒素肥料は土壌中の微生物によってアンモニア態から硝酸態窒素に急速に変化(硝化)して流れ出し、作物に利用されない。
これを防いで窒素肥料が土壌に長く留まり作物により吸収されるよう、これまで土壌微生物を殺菌する手法も考えられてきたが、国際農研は一部の植物で根から物質を出して硝化を抑制する機能を発見した。
これを生物的硝化抑制(BNI)といい、この能力を強化した作物であれば、硝酸態窒素として流れ出し水質汚染を引き起こすことを防ぐことにもつながる。
昨年8月に発表されたBNI強化小麦は、高いBNI能を持つ野生コムギ近縁種のオオハマニンニクとの属間交配により、多収品種にBNI能を付与したもの。研究では6割少ない窒素肥料でも生産性が維持されることが示された。
小麦は世界で約2億2500万haの農地を占める。今回の品種改良は窒素肥料の低減による温室効果ガス排出削減や、水質汚染の防止に貢献する。今後、国際農研をはじめとする研究グループはインドでの栽培体系に取り組む。
みどりの食料システム戦略では「温室効果ガスと水質汚濁物質を削減する生物的硝化抑制(BNI)能強化品種の開発」が明記されている。農水省は、こうした品種を「アジアモンスーン地域に広げていく」こともめざす。
この論文が掲載されたPNASは2021年に3476報を掲載した。毎年6分野で1論文、計6論文のみに最優秀賞が授与され、国際農研らの論文は「応用生物学・農学・環境科学」の分野で選ばれた。
学術雑誌の影響度を示す指標「インパクトファクター」ではPNASは11.205となっている。インパクトファクターが10以上は主要学術誌1万3000誌の上位2%に入ることを示すという。NatureやScienceなどに次ぐ一流誌の厳しい審査を経て掲載されただけでなく、年間最優秀論文にも選ばれた。世界に貢献する研究成果として評価されたといえる。
授与式は5月1日にオンラインで行われる。
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