高まる不安と関心 「白書」食と農の指針に 企画部会2022年4月22日
食料・農業・農村政策審議会企画部会が4月21日に開かれ「白書」本文案を議論した。企画部会ではロシアのウクライナ侵攻で資源や食料価格が高騰するなか、「今ほど資源のない日本の危うい立場を考えることはない」、「白書の持つ意味大きい。国民への周知を図るべき」など白書の活用が重要とする意見とともに、基本計画のフォローアップなど食料安保の強化に向けて議論をしていくべき意見も出た。
農林水産省で開かれた企画部会
国民への情報発信を
2021(令和3年)度の白書では、農業センサスをもとにした「変化(シフト)する我が国の農業構造」を特集のテーマとした。
基幹的農業従事者の推移や農業経営体、経営規模拡大の動向などを分析したうえで、今後に向けて分析のまとめを記述している。
そこでは若年層の農業者の確保と定着とともに、65歳以上の農業者の割合は依然として大きく、地域農業を維持する観点から、この層の役割は引き続き大きいと記述した。
また、品目では米の割合が減少し畜産と野菜の割合が増えていることをふまえて需要に応じた生産の取り組みが今後も重要になると強調している。
特集以外の項目ではロシアによるウクライナ侵略を背景にし原油価格や生産資材価格が高騰している状況にも触れ、消費者の理解を得つつ、生産コスト高騰の適切な価格転嫁のための環境整備が必要なことも盛り込まれた。
今回の白書に対して、JA全中の中家会長は「コロナ禍とウクライナ情勢のなかで食料・農業に非常に関心が高まっている。国民理解の醸成に向けてチャンスであるという視点が大事」だとして、概要版の編集も重要になると述べた。また、農地の動向、資材価格、輸入農産物の動向などももっと記載を増やすよう求めるとともに、中長期的には輸入依存からの脱却をめざして「食料安保の強化に向けた議論をすべき」と主張した。
全国農業会議所の柚木茂夫専務は「白書」を国民に周知することが重要であることや、不測の事態に対する検討をさらに深めるべきだと指摘した。また、今後のテーマとして市町村農政の推進体制の状況把握と課題を検討すべきだと提起した。
他の委員からも戦争は不幸なことで一刻も早く終わらせるべきだが、日本として食と農を見直していくべき時だとする意見が相次いだ。
そのなかでキリンの磯崎功典代表取締役社長は「国内の重要な品目の自給率を上げることは大事」と延べ、同社のビールについて「輸入のほうが安いが、国内産ホップの80%を使ってふんばっている。輸入すれば(生産から調達まで)ブラックボックス化してしまう」と輸入依存のリスクを実感を込めて話した。
キッコーマンの堀切功章代表取締役会長は「今ほど資源のない日本の危うい立場を考えたことはない」などと述べ、食料と農業を考える機会とすべきだと話した。
そのほか白書に記述については、担い手への農地集約と基盤整備の重要性を記述すべきなどの指摘もあった。
白書は議論をふまえて農水省がとりまとめ、5月下旬の閣議決定をめざし、その後、国会に報告される。
大橋弘部会長(東大公共政策大学院院長)は「白書で現状を確認した後、基本計画のフォローアップすべき」と延べ、コロナ禍やウクライナ情勢をふまえれば「このままの基本計画でいいはずがない」との認識を示した。基本計画は実践こそが重要。担い手への農地集積への状況など、現場の実態に即したフォローアップが期待される。
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