木材価格高騰などウッドショックを特集 ウクライナ情勢で対応策の必要指摘も 森林・林業白書2022年5月31日
政府は5月31日、2021(令和3)年度の森林・林業白書を閣議決定した。コロナ禍での米国での需要の高まりや海上輸送の混乱などによる木材不足・価格高騰、いわゆるウッドショックへの対応を特集として扱ったのが特徴。また、ロシアのウクライナ侵攻でロシアからの木材輸入の先行きが不透明だとして、対応策の必要性を指摘している。
白書によると、米国でテレワークの増加で住宅着工戸数が急増して2021年に北米の製材価格が過去最高を記録したのをはじめ、米国のコンテナ滞留などでコンテナの海上輸送運賃が上昇し、製材の輸入価格が大幅に上昇した。また、国内でも住宅需要が回復する中、輸入木材の代替として国産材の需要が高まり、昨年春から国内産の製材品などの価格も急上昇した。
こうしたなか、国内の製材工場は稼働率を上げて対応したが、乾燥施設の処理能力や労働力などがボトルネックとなって十分に対応できず、木造住宅の供給事業者からは木材の入手が難しいという声が聞かれた。このため林野庁では、2021年4月から、川上から川下までの関係者を集めた中央需給情報連絡協議会を開き、政府の支援策や輸入材製品から国産材製品への転換事例を周知した。また、2021年度補正予算で、国産材の供給力の強化に向けて予算を確保したことを紹介している。
白書では、ロシアのウクライナ侵攻をめぐる情勢から、日本の製材用材消費量の5.7%を占めるなどロシア産の木材の需給や流通の先行きが不透明だとして、影響を受ける事業者の状況を注視するとともに、「対応策についても検討が必要な状況となっている」と指摘している。
また、「グリーン成長のカギを握る木材需要拡大と木材産業の競争力強化」についても特集を掲載。カーボンニュートラルにつながる木材利用の意義などを強調し、製材工場や合板工場の規模拡大が進んでいる状況を紹介している。そのうえで今後の課題としてて、今後供給増が見込まれる直径30センチを超える大径材を効率的に製材する体制が整備されていないことや国産材活用に向けたさらなる技術開発が必要であることなどを挙げている。
一方、トピックスとして、4つを取り上げた。この中では2021年6月に閣議決定された新たな「森林・林業基本計画」で、建築物への木材利用を推進することで、2050年カーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」の実現を目指す方針を盛り込み、実現に向けては木材産業の競争力強化など5つの施策ポイントがあることなどを紹介した。
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