第37回農業ジャーナリスト賞4氏を表彰2022年6月7日
農政ジャーナリストの会は6月6日に開いた総会で第37回農業ジャーナリスト賞に選ばれた4氏を表彰した。
左から新潟放送情報センターテレビ制作部の吉井一善部長(吉は異体字)、
NHK山形放送局コンテンツセンターの加納加奈子ディレクター、
北日本新聞社社会部の宮田求編集委員、
みずのわ出版/みずのわ写真館の柳原一徳代表(徳は異体字)
農政ジャーナリストの会は、前年に発表された農林水産業、食料問題、農山漁村の地域問題などに関するルポルタージュや連載企画、出版物、放送番組などを表彰している。
今回は新聞・書籍部門から6点、テレビ・映像部門から6点、計12点の応募があり、選考委員会の審議を経て以下の4作品が選ばれた。
●「神の川 永遠に-イ病勝訴50年」(北日本新聞社)
上流の鉱山から流れ出たカドミウムで汚染され、農作物被害とともに起きたのが四大公害病の一つ、イタイイタイ病だった。裁判の勝訴から50年、闘いの歴史を絶対に風化させないと11回にわたり連載した。
取材・執筆した社会部編集委員の宮田求さんは表彰式で「イ病克服の歴史を再検証するなかで、今を生きる私たちの教訓を導けないか模索した」と振り返り、かつてのイ病への差別とコロナ禍での感染者への差別を重ね合わせ、どう向き合うべきかを問いかけた。
連載終了後も取材を続け、汚染された表土を地下に埋めて復元した農地が緩み、最近では農機が沈み作業に支障を来すという例が相次いでいることも報じた。「風化どころか一旦起きた公害はずっと住む人を苦しめ続ける。公害がいかに罪深いか実感している」と話した。
●「俺たち、ムロヤ青年会~ゆるく 楽しく 元気よく~」(新潟放送)
新潟県阿賀町にある室谷青年会。「今どき青年会?」と興味を持ったのが取材のきっかけだったと情報センターテレビ制作部部長の吉井一善さんは話す。ただ、長年、祭りや伝統行事の活動を通して地域に貢献してきたものの、コロナ禍で活動ができなくなり、存続も危ぶまれるようになった。
番組では青年会の活動を丁寧に記録、現状を打破したいと取り組んだ休耕田でスパイスのコリアンダーを栽培し、新潟市内の福祉施設と連携したオリジナルのレトルトカレーを販売する姿などを描いた。最近では小学校の廃校を民宿にできないかとの動きも出てきたという。
吉井さんは「新潟では年々新しいことに挑戦する農家が増えていると感じる。テレビの取材が後押しとなるようにがんばっていきたい」とあいさつした。
●やまコレ「食べる喜びをもう一度~鶴岡 えん下のグルメ」(NHK山形放送局)
病気や加齢で食べ物を飲み込みづらくなった人たちへ食べる喜びをもう一度味わってもらいたいと、地元食材を生かした特製の「えん(嚥)下食」を作る旅館の料理人に密着したドキュメンタリー。
加納加奈子ディレクターはえん下食を食べた男性が涙を流す姿を目の前にし「どんな思いがあるのか、当たり前の食べるという行為を見つめなおす番組ができないかと取材を始めた」と話す。
地元の医療や福祉従事者と連携しえん下食を提案するなかで食事というものの尊さを伝え、また、農業は食べることを支える産業であることも考えさせられる作品と評価された。加納さんは「これからも一人ひとりの"生きる"を支える番組をつくれるよう努力していきたい」とあいさつした。
(特別賞)●柳原一徳著「本とみかんと子育てと~農家兼業編集者の周防大島フィールドノート」
神戸市生まれの柳原さんは、新聞・放送記者を経て阪神大震災後に出版社を設立。東日本大震災を機に母方の実家の周防大島に移転し、ミカン農家兼出版編集者となる。本書は島での生活、ミカンの作業、子育てなどの奮闘ぶりを記録した。
柳原さんはミカンの価格下落と資材費高騰で非常に厳しい状況に加えて、気候変動も実感していると話し「農業は記帳だ」との考えで、これからも記録を続けていくと話す。
苦労が絶えないなか、地に足をつけた実践者として視点はしっかりしている、ミカンを守らないと島が沈むという信念が伝わると評価された。あいさつで柳原さんは「農家をやりながら、ジャーナリズムの世界に片足を残しながら評価されたことをうれしく思う」などと語った。
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