米価下落と肥料高騰 水田経営の赤字拡大 農中総研が試算2022年7月21日
農林中金総研は7月20日に開いた緊急フォーラム「世界と日本の食料安全保障を考える」のなかで、米価下落と肥料価格高騰で水田作経営で赤字幅が拡大するとの試算を明らかにした。
小針美和主任研究員
基礎研究部の小針美和主任研究員が発表した。
小針氏はウクライナ情勢が緊迫化する前から、とくに稲作の景況感は悪化していたと指摘した。日本政策金融公庫の景況DIは2020年から21年にかけて農業全体では▲24.9が▲29.6へと悪化したが、稲作に限ると都府県では▲33.4が▲55.9へ、北海道では▲55.2へと大幅にマイナスとなっている。
米価は20年産から低下し、21年産で大幅に下落した。とくにコロナ禍での外食需要の減退で業務用向けの産地銘柄で下落幅が大きいことが相対取引価格の推移に現れている。
小針氏は米価下落と肥料価格高騰が稲作経営に与える影響を試算した。シナリオは▽2021年に21年産米価が11%下落、▽2022年に肥料費が15%上昇、▽2023年に肥料費が22年産からさらに60%上昇する、とした。
その結果、個人経営体では2020年の農業所得12.6万円が、21年には▲5.5万円、22年には▲9.1万円、23年には▲25.6万円になると試算された。肥料価格の上昇で赤字幅が大きく拡大する。
規模別にみると肥料価格高騰の影響をダイレクトに受ける23年では3~5ha経営でも赤字に転落する。
5~10ha経営も農業所得は13.5万円とほとんど残らない。
法人経営は20年度で水稲作付面積36.3ha、売上高6735万円、経常利益657万円だが、21年度では米価下落で経常利益は8割減の142万円と大幅に減少する。
肥料価格高騰の影響で22年度は96万円へと激減、さらに23年度は▲114万円への経常利益が赤字となる。小針氏によると作付規模別の推計結果に大きな違いはみられないという。
米価下落には、収入保険とナラシ対策で一定の収入減を緩和する対策があるが、肥料高騰のような突発的なコスト上昇をカバーできる仕組みがないと指摘した。
一方で次期春肥のラインナップで、各地域で化学肥料の削減を促すような施肥体系の見直しも必要だと提起した。
世界の化学肥料使用量は1億8000万で日本の使用量はわずか0.5%に過ぎず、「今後は肥料原料の調達そのものがさらに難しくなる可能性がある」ことも指摘。輸入依存の低減、国内資源循環の強化が必須だと強調した。
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