「偏西風の蛇行」が今夏の猛暑・大雨の要因に 気象庁異常気象検討委 農作物への大雨被害に引き続き注意2022年8月23日
今年夏の猛暑やその後の北日本などへの記録的な大雨について、気象庁の異常気象分析検討委員会(会長・中村尚東京大学教授)は8月22日、分析した見解をとりまとめた。猛暑、大雨とも日本付近での亜熱帯ジェット気流という偏西風が大きく蛇行したていることが要因の1つとされ、前線の停滞しやすい状況が大雨の一因になったなどとの見方を示した。偏西風の蛇行はまだ続いているとされ、気象庁は農家などに気象情報に大雨への備えを考えてほしいと注意を呼び掛けている。
気象庁の異常気象分析検討委員会の見解についての記者会見
記録的な高温は「異常気象」
今年の夏は全国的に高温となり、特に6月下旬から7月初めは記録的な高温となった。6月下旬の平均気温平年差は、東日本で+4.0度、西日本で+3.2度となり、統計開始以降の1位を更新した。この時期には全国914地点のうち24地点で観測史上最高気温を更新し、群馬県伊勢崎市では3日間、40度以上を観測、東京では6月25日から9日間連続で猛暑日となった。
この猛暑をもたらした大気の流れについて、中村会長は、偏西風が日本付近で北に大きく蛇行したことが、太平洋高気圧などの強い張り出しに影響したと説明、フィリピン周辺の海面水温が高かったことでフィリピン付近の積雲対流活動が活発化したことや、地球温暖化に伴う気温の上昇傾向も、記録的な高温をさらに底上げしたと考えられると指摘した。中村会長は「今夏の猛暑については異常気象と言えると考えている」とコメントした。
7月中旬~8月の大雨も偏西風の蛇行が影響
一方、7月中旬から8月中旬にかけては、北日本などで記録的な大雨が発生した。7月中旬には、北~西日本で短時間に記録的な降水量を観測する大雨が各地に発生したほか、8月3日~4日には線状降水帯も発生し、各地で土砂災害や河川の氾濫などの被害が発生した。新潟県関川村では1時間に149ミリ、24時間で560ミリの観測史上1位の値を更新した。また、8月上旬末から中旬にかけては北日本付近に前線が停滞し続け、青森県で8月8日~14日の総降水量が400ミリを越えるなど東北北部を中心に記録的な大雨となった。
同委員会は、このうち7月中旬の大雨については、日本の北方で形成されたブロッキング高気圧の南側に当たる日本付近の上空で、寒気を伴った気圧の谷が持続して大気の状態が不安定になったことが一因と分析、偏西風の蛇行がこの気圧の谷の持続に影響したと指摘した。
8月上旬~中旬の北日本中心の大雨をもたらした大気の流れの模式図(気象庁資料より)
また、8月上旬末~中旬前半の北日本の記録的な大雨については、太平洋高気圧の縁に沿った水蒸気の流入と、前線に沿った水蒸気の流入が合流する状況が持続していたと分析し、亜熱帯ジェット気流の蛇行や、太平洋高気圧の勢力が平年より強い状態であったことが影響していたと指摘した。
この亜熱帯ジェット気流は平年より強く、前線が停滞しやすい状況で、上層の気圧の谷の影響もあって前線周辺で降水活動が強化されたことも大雨の一因と考えられるなどとした。
さらに日本では、長期的に極端な大雨の強さが増大する傾向が見られているとして、その背景要因について、「地球温暖化による気温の長期的な上昇傾向に伴い、大気中の水蒸気量も長期的に増加傾向にあることが考えられる」として、温暖化の影響にも言及した。
偏西風の蛇行は継続 今後も大雨に注意を
北日本などに記録的な大雨をもたらした原因の1つとされる偏西風の蛇行は、現在も継続しているとされる。太平洋高気圧の張り出しは弱まわってきているものの、東北地方では各地で水田の冠水などの被害が出ており、引き続き大雨への備えが必要だ。同庁異常気象情報センターは「これまでのような記録的な大雨となる可能性は高くないとみられるが、気象台などの出す気象情報を細かくチェックして作物によっては早めに収穫するなどの対策を考えてほしい」と注意を呼びかけている。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(119) -改正食料・農業・農村基本法(5)-2024年11月23日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (36) 【防除学習帖】第275回2024年11月23日
-
農薬の正しい使い方(9)【今さら聞けない営農情報】第275回2024年11月23日
-
コメ作りを担うイタリア女性【イタリア通信】2024年11月23日
-
新しい内閣に期待する【原田 康・目明き千人】2024年11月23日
-
基本法施行後初の予算増確保へ JAグループ基本農政確立全国大会に4000人 生産者から切実な訴え2024年11月22日
-
「適正な価格形成」国関与で実効的に JA群馬中央会・林会長の意見表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
JAグループ重点要望実現に全力 森山自民党幹事長が表明 基本農政確立全国大会2024年11月22日
-
農林水産省 エン・ジャパンで「総合職」の公募開始2024年11月22日
-
鳥インフル 米モンタナ州、ワシントン州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 輸入を一時停止 農水省2024年11月22日
-
11月29日「ノウフクの日」に制定 全国でイベント開催 農水省2024年11月22日
-
(411)「豚ホテル」の異なるベクトル【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月22日
-
名産品のキャベツを身近に「キャベツ狩り選手権」開催 JA遠州中央2024年11月22日
-
無人で水田抑草「アイガモロボ」NEWGREENと資本業務提携 JA三井リース2024年11月22日
-
みのるダイニング名古屋店開業2周年「松阪牛ステーキ定食」特別価格で提供 JA全農2024年11月22日
-
【スマート農業の風】農業アプリと地図データと筆ポリゴン・eMAFF農地ナビ2024年11月22日
-
自動運転とコスト【消費者の目・花ちゃん】2024年11月22日
-
イチゴ優良苗の大量培養技術 埼玉農業大賞「革新的農業技術部門」で大賞受賞 第一実業2024年11月22日
-
「AGRIST Aiサミット 2024」産官学金オープンイノベーションで開催2024年11月22日