「資本主義の暴走止めるのは協同組合」解明の著書で食農資源経済学会賞 東京大学大学院・鈴木宣弘教授2022年9月1日
JAcomでコラム「食料・農業問題 本質と裏側」を連載している東京大学大学院の鈴木宣弘教授が、資本主義の欠陥を指摘し、その暴走を止めるカギは農協などの共生システムにあると理論的・実証的に解明した著書「協同組合と農業経済―共生システムの経済理論ー」の業績により、食農資源経済学会(学会長・磯田宏九州大学教授)の学会賞(学術賞)を受賞した。8月27日にオンラインで授賞式が行われた。
東京大学大学院 鈴木宣弘教授
「協同組合と農業経済―共生システムの経済理論ー」は、鈴木教授が今年1月に発表した著書。
この中で鈴木教授は、経済格差が拡大するのは、市場支配力のある企業などに利益が集中する現行の政治経済システムの持つ「普遍的欠陥」であり、是正するカギは共生システムの機能にあることを理論的・実証的に解明した。
具体的には、農協改革による共販・共同購入システムの取り崩しが、改革目的の農業所得向上と矛盾している事実などを指摘しながら、農協が機能することで生産者や消費者が利益を増やし、経済全体の利益も増やすことができることを、新たに開発したシミュレーションで実証し、共生システムの有効性を定量的に示した。
学会賞への推薦理由では、農協への批判的な見解もある中、精緻な理論と実証で第1次産業を中心とした「共生システム」の重要性を論じたことで、農業経済学分野にとどまらず、経済界・産業界に重要な視座を与え、国の政策立案にも多くのインパクトを与えていると強調された。
鈴木教授は、1982年に農水省に入省し、九州大学農学部助教授や九州大学大学院農学研究院教授を経て2006年から東京大学大学院教授を務めている。
鈴木教授は受賞について、「農水省の時代から、九州大学、東京大学を通じて、ともに研究し、支えていただいた諸先輩・仲間・学生さん、全ての皆さんのおかげと心より感謝しています。『私』(今だけ・金だけ・自分だけ)が『公』(政治・行政)を私物化して暴走する『現代資本主義の必然的メカニズム』を是正するのは協同組合に代表される共同体的な共生システム(コモン)の役割であることを理論的・実態的・実証的に明らかにしようとした執念の軌跡がここにあります」と話している。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日