「肥料高騰の中、地域に応じて交付金など活用を」 「みどり戦略」推進へ農水担当者が呼びかけ 農協研究会2022年9月6日
実践段階に入った「みどりの食料システム戦略(みどり戦略)」をテーマに、9月3日に開かれた研究会(農業協同組合研究会主催、農協協会協賛)で、みどり戦略を担当する農水省みどりの食料システム戦略グループ長の久保牧衣子氏が、今後の施策の方向性などについて報告した。化学肥料などが高騰する中、久保氏は「せっかくの制度なので、国内資源の活用などに税制措置や交付金などを活用してほしい」と呼びかけた。
農水省みどりの食料システム戦略グループ長 久保牧衣子氏
温室効果ガスの排出が問題となってEUや米国が食料・農林水産業と持続可能性に関わる戦略を策定する中、アジアモンスーン地域の気候風土にあった日本の農業の将来を見据えた戦略として作られたのがみどりの食料システム戦略で、世界的にもしっかり発信しているところです。
この中で2050年までに化学農薬を50%、化学肥料を30%低減などと目標を掲げていますが、もう少し身近な目標が必要とのご指摘をいただき、今年6月に2030年目標として化学農薬10%、化学肥料20%削減といった目標を立てています。この目標は生産だけでなく、調達、加工流通、消費と食料システム全体で変えていく必要があるというところがみどり戦略の肝です。
国が今月中に公表する基本方針では、環境負荷低減に取り組む生産者を支援する計画認定制度と、生産者の取り組みを支える環境整備的な事業者の計画認定制度があり、これに基づいて税制や金融措置などで生産者の方などを支援をしていくことになります。
みどり戦略は、突然、『農薬を使わないように』という乱暴な話ではなく、例えば栽培歴の見直しに向けてチェックポイントを作成し、地域の状況に応じてステップを踏んでほしいとお願いしています。ファーストステップは、農薬や肥料を過剰につかっていないか。例えば土壌分析をして施肥などを行う。セカンドステップとして、他の地域で実践されている天敵や防虫ネット等を活用した防除技術の導入を勧める。最後のサードステップで先端技術を活用しませんかということで、地域の状況に応じてステップごとに取り組んでいただきたいと考えています。こうした取り組みにあたって交付金などを活用していただく形としています。
持続性の高い農法の例を紹介していますが、水稲に関しては、例えばカメムシ対策で農薬を減らす代わりに色彩選別機を入れて被害粒を取り除き品質を保つことなども農薬を減らす選択肢に入ると考えています。また、リンゴ黒星病などでは化学農薬のみに依存せず、落ち葉などを速やかに処理して拡大を予防するなど、農薬を使わないで済む総合防除を推進したいと考えています。
国が今月中に基本方針を公表して各都道府県と市町村には共同で基本計画を速やかに策定していただき、生産者の計画認定がスタートします。早い自治体は年内、多くは年度内には策定していただくことをお願いしています。
基本方針全体に言えることですが、みどり戦略は高い目標、意欲的な目標を掲げていますが、地域や生産者の皆さんの状況に応じてまずは一歩踏み出していただくことが大事で、特に規模要件や厳しい面積要件は設けていません。基本的には地域の実情に応じてやっていける形を基本方針にしています、
実はみどり戦略をつくるときに化学肥料の高騰があるとは考えていませんでした。今後のことを考えるとやはり国内資源を活用する方も増えると思います。せっかくの制度ですので、税制措置や交付金を活用していただきたいし、日本農業の足腰が強くなり、最終的に食料安全保障に資する取り組みになると考えています。
(関連記事)
・「カギ握るのは消費者」「資材高騰の中で活用を」「みどり戦略」めぐり報告・討論 農協研究会主催(2022.9.5)
・【報告2】JAぎふ代表理事組合長 岩佐哲司氏
「消費者の理解が第一」コンソーシアム設置へ(2022.9.7)
・【報告3】元JA全青協会長 飯野芳彦氏
100年後に成果出せる施策を 伝統農業を見直すべき(2022.9.8)
・【討論】農水官僚 VS 大規模農家
「みどり戦略」成功のカギを握るものは(2022.9.9)
重要な記事
最新の記事
-
【2025新春トップ座談会】営農畑出身全国機関会長の思い JA全農折原会長・家の光協会栗原会長・大金義昭氏(2)2025年1月9日
-
【2025新春トップ座談会】営農畑出身全国機関会長の思い JA全農折原会長・家の光協会栗原会長・大金義昭氏(3)2025年1月9日
-
【2025新春トップ座談会】営農畑出身全国機関会長の思い JA全農折原会長・家の光協会栗原会長・大金義昭氏(4)2025年1月9日
-
木南晴夏プロデュース「キナミのパン宅配便」横浜市青葉区の「ココロベーカリー」と提携2025年1月9日
-
米糠摂取で腸内の有用菌が増加 動物実験で証明 信州大と共同研究 東洋ライス2025年1月9日
-
福島のいちご「ゆうやけベリー」フェア 日本橋ふくしま館MIDETTEで開催2025年1月9日
-
肌の乾燥に効く玄米加工品「澄SUMU」パックごはんが新登場 ミツハシライス2025年1月9日
-
農産物・特産品業界向け 「中国地方の地域活性化に向けたPR戦略活用ガイド」無料公開2025年1月9日
-
日本酒造りの聖地「灘五郷」の歴史と文化体感イベント 東京・日本橋で開催2025年1月9日
-
鳥インフル 米ウェストバージニア州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年1月9日
-
空から降り注ぐ「いちご狩り」横浜「the BERRY YOKOHAMA」で21日オープン2025年1月9日
-
規格外いちご使用チョコ菓子「はるかすまいる de Chocolat」発売 近鉄百貨店2025年1月9日
-
「浜松・浜名湖フェア」羽田産直館で初開催 食と観光情報が一堂に2025年1月9日
-
「静岡県地域おこし協力隊合同募集相談会」26日に都内で開催2025年1月9日
-
【震災から1年・能登復旧遅れ】倒壊家屋なお 地域喪失 他人事でなく(1) ジャーナリスト・青木理氏2025年1月8日
-
震災から1年 能登復旧遅れ 倒壊家屋なお 地域喪失 他人事でなく(2) ジャーナリスト・青木理氏【2025国際協同組合年 どうする・この国の進路】2025年1月8日
-
330万羽が殺処分対象 鳥インフルエンザ 衛生管理徹底を2025年1月8日
-
農政 大転換の年へ 江藤農相2025年1月8日
-
「協同組合基本法」制定めざしシンポジウム 1月28日 JCA2025年1月8日
-
価格転嫁拒否は「違法」 公取委が日本郵便を指導 運転手の待遇改善、物流維持に不可欠2025年1月8日