輸入小麦 政府売渡価格据え置き マークアップ減に特別会計で対応 10月期2022年9月12日
農林水産省は9月9日、輸入小麦について10月期の政府売渡価格を4月期価格に据え置くことを決めた。
小麦の国際価格はロシアのウクライナ侵攻で供給懸念が高まり、シカゴ相場は3月7日に史上最高の14.25ドル/ブッシェルとなり、その後、米国の作付意向の増加で下落したが、ウクライナ産穀物の輸出停滞などで5月中旬には12ドル台後半まで上昇した。
その後、国連がウクライナ産穀物の輸出再開に向けた支援計画を発表し、ロシアとトルコ、ウクライナによる輸出再開合意と実施で相場は7ドル台へとウクライナ侵攻前の水準で推移している。
こうした状況のもと、農水省は小麦の買い付け価格の急激な変動の影響を緩和するため、10月の価格改定を見送って据え置きとするとともに、来年4月期の価格を決めるための算定期間を通常の6か月を1年間に延長して平準化する緊急措置を決めた。
2023(令和5)年4月期の価格の算定期間は今年9月から来年の3月までだが、これを緊急措置によって今年3月から来年3月までの1年間とする。
一方、10月期の政府売渡価格は1t7万2530円で据え置くが、過去2番目に高い価格となる。昨年10月期の価格(同6万1820円)からは17.3%の引き上げ。
ただ、仮に従来どおり今年3月から9月までの買い付け価格で算定した場合は同8万6850円で、4月期価格にくらべて19.7%の引き上げ率で、価格は過去最高水準となる。
価格には小麦相場に加えて円安の急進も影響している。4月期の算定期間である昨年9月から今年3月まではドル平均115円だったが、現在は平均131円程度となっている。円安が価格引き上げの大きな要因となっている。小麦のシカゴ相場は落ち着きを見せているものの、欧米の中央銀行はインフレ引き締めのために金利引き上げを行っており、一方で日本は低金利が維持され円安はさらに進むことが考えられる。来年4月の政府売渡価格への影響が考えられる。
一方、10月からの政府売渡価格を据え置いたことはマークアップ(輸入差益)に影響する。マークアップは国家貿易によって輸入する麦を農水省が製粉企業などに売り渡す際に徴収するもので、備蓄等に要する経費を除いたものは国内産麦生産振興の原資となる。
売渡価格を据え置いたものの、輸入価格は上昇しているため、その分、マークアップは少なくなる。農水省によるとマークアップの減少で今年度後半に国内産麦の生産振興原資が不足するおそれがあるが、特別会計である食糧管理勘定のなかで必要な額は確保できるとしている。
(関連記事)
・輸入小麦の政府売渡価格は据え置き検討 農水省 買い付け価格は約2割増も首相指示受けて(22.8.22)
重要な記事
最新の記事
-
【現地ルポ】福岡・JAみなみ筑後(2)大坪康志組合長に聞く 「農業元気に」モットー2024年7月18日
-
【注意報】野菜・花き類にオオタバコガ 栽培地域全域で多発のおそれ 既に食害被害の作物も 群馬県2024年7月18日
-
【注意報】過去10年間で最多誘殺 水稲の斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 山口県2024年7月18日
-
【注意報】平年の4倍 水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2024年7月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「財務省経済産業局農業課」て何?2024年7月18日
-
1970年代の農村社会の異質化の進展と農業【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第299回2024年7月18日
-
「JAサイネージ」 JA本店や金融店舗の情報発信にも利用拡大 あぐラボ2024年7月18日
-
【人事異動】JA全国共済会 新会長に坂本富雄JA埼玉県中央会会長(7月18日)2024年7月18日
-
スマホでより便利に「石川県Aコープ(ジャコム石川)アプリ」提供開始2024年7月18日
-
TOWING「宙炭」活用 根域制限栽培によるシャインマスカット栽培実証開始 日本農業2024年7月18日
-
バイトアプリで1万人採用 農中提携の農業人材サービス 労働力確保に寄与2024年7月18日
-
全国7000名以上の生産者の声を反映 生産コスト低減へ JAグループ宮城 共同購入コンバイン出荷式 JA全農2024年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 全県で多発のおそれ 秋田県2024年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年7月18日
-
【注意報】野菜、花き類にオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 過去10年最多の昨年を上回る誘殺 千葉県2024年7月18日
-
【注意報】ネギにシロイチモジヨトウ 県内全域で多発のおそれ 千葉県2024年7月18日
-
【注意報】果樹全般に果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年7月18日
-
農業用ドローン専用カスタマーサポート 繁忙期で対応拡大 ナイルワークス2024年7月18日
-
食物繊維が豊富なもち麦2種の品種登録 成果を紹介 生研支援センター2024年7月18日
-
AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」エントリー&ハイエンドモデル同時リリース2024年7月18日