農業労災補償の拡充を 関心呼び起こし、加入促す 日本農業労災学会がシンポ2022年10月24日
日本農業労災学会(北田紀久雄会長)と東京農業大学総研研究会は10月21日、東京・世田谷の東京農業大学で、第9回目となる2022年度のシンポジウムを開いた。社会保険労務士や農業団体が、農業労災保険の仕組みや加入手続きなどについての取り組み事例を報告。特に農業現場に即した制度の改善や、農業労災に対する農業者の関心を高める必要性が指摘された。
 農業労災加入を訴えた日本農業災害学会のシンポジウム
農業労災加入を訴えた日本農業災害学会のシンポジウム
労災保険は、本来、労働者の負傷、疾病、傷害、死亡などに対して保険給付を行う制度で、一人でも雇用があると加入が義務付けられている。個人事業主である農業者は加入の義務はないが、一定の要件のもとに「特別加入」という形で利用できる。農作業中の事故が増えているため、加入の必要性が唱えられているが、制度の認知度は低く、全国の加入率は対象者の10%弱に過ぎない。
一方で、全国の農作業事故死亡者は2020年で270人。農業従事者の減少で、2年続いて減少しているが、就業人口10万人あたりでは10・5人で過去最高。建設業の5・2人の約2倍になっている。トラクターの転倒事故など農業機械による死亡が7割近くを占める。1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と、300件の怪我にいたらない事故がある(ハインリッヒの法則)と言われており、依然、農作業の危険性は高い水準にある。
こうした状況があるにもかかわらず、特別加入制度は、1965年以降50年余り、農作業従事者の対象を全作業に拡大することが求められているものの、ほとんど進んでいないのが実態だ。また、「別加入」対象となる特定農作業従事者は、経営耕地面積2ha以上、または年間農畜産物販売金額300万円以上という要件がある。シンポジウムでは、農作業の実態に即した労災保険の改正を求める意見が出るとともに、現行の制度に対する農業者の関心の低さが指摘された。
JA組織を挙げて労災補償・農作業事故防止に積極的に取り組んでいるJA鹿児島県中央会営農サポートセンターの桐原章主幹は「農業労災制度と加入手続きについて、全国のJA・農業普及部署で、どれだけ相談機能を持っているか」と問題提起し、認知度のアップと加入手続きについて、JAの積極的なサポートの必要性を強調した。
鹿児島の農作業死亡事故は2021年で19件発生し、全国2番目に多い。JAの要望に応えで2020年、中央会内に労働保険事務組合を設置して,農業労災の加入に必要な相談や事務手続きについてサポートしている。現在、同県の労災保険加入は387事業所、1651人。年々拡大している。
加入率の低さについて、神奈川県のJAはだのの宮永均組合長は「現場に近いところにいる我々が、組合員と一緒に考えていくことが重要。必要性を認識し、どう動くかが問われている」と言う。また東京農業大学の白石正彦名誉教授は「現場は大きく変わっているのに、法律が追いついていない。JAグループも自ら検討する必要がある」と、現場に強いJAの主体的な関わりを促した。
◇
JAはだの(奈川)に学会賞
農業労災学会はシンポジウムと合わせ、第2回学会賞受賞者の表彰式を行った。実践賞・個人の部で中村雅和・いのしし社会保険労務士事務所所長(福岡県)、同団体の部でJAはだのが(神奈川県)受賞した。
中村所長は、2010年「農業労災事務センター」を設立し、加入促進、事故対応に取り組む。福岡県内で21団体(20JA)、723人の会員を持つ。全国で啓蒙活動を続け、農業従事者の安全確保に貢献している。
一方、JAはだのは1978年に「農業労働災害対策委員会」を設け、農作業安全対策、農業労働災害保険加入促進の活動を45年間、一貫して、続けてきた。この取り組みは秦野市、秦野市農業委員会、JAはだのの3者によるネットワーク「はだの都市農業センター」が組織的に取り組み、現在、正組合員の3割強が、「特別加入」している。
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