農地の将来像描く地域の「目標地図」作り支援へ 農水省が先行事例まとめ全国に周知2022年10月25日
農家の高齢化や減少が進む中、各地域が進める将来の農地利用の姿を明確化した「目標地図」づくりを支援しようと、農水省は全国の先駆的な10の事例をホームページに掲載し、都道府県などを通して全国に周知した。農地の分散や担い手不足など多くの地域が共通した悩みを抱える中、粘り強く協議を重ねて農地の集約化を実現させたケースなどを参考にしてほしいとしている。同省は来年度予算の概算要求でも地域計画策定の支援に約24億円を盛り込んで支援に乗り出す。
「目標地図」は、来年4月に施行される農地関連法を受けて、基本構想を作成している全国の市町村で策定が進められる。各地域で協議して10年後の農地の姿を一筆ごとに利用者を明確化するなどして令和7年3月末までに策定する。農水省は来年度に約24億円を予算化して支援に乗り出す方針を示している。
こうした中、同省は10月24日、全国でいち早く目標地図づくりを成功させた10の先行事例を同省ホームページの「人・農地プランから地域計画へ」のページに掲載し、農政局や都道府県を通して周知した。各地の優良事例を集めたもので、平地や中山間地域など様々な取り組み事例が紹介されている。
このうち福井県小浜市(今富地区)では、話し合いに参加できない地区外や遠方の地権者から同意を得るために集落在住の親戚等を通すなどして丁寧に説明を重ねた。年齢的にもう少し耕作を続けたい意向の地権者は、農地バンクから賃借権の設定を受けた担い手と特定農作業受委託計画を結ぶことで、耕作が継続できるように配慮した。この結果、耕作できなくなったときの引き受け手が決まり、集落の農地が今後も守られるという安心感が地域全体で広がったという。
岐阜県養老町(笠郷地区)では、平成24年から作成を始め、毎年夏ごろに更新が必要かどうか確認を行っている。時間をかけて合意形成を進めた結果、70~80代の担い手からは若手の担い手が地図に位置づけられていれば、自分たちを地図に反映しなくてもいいという反応もあったという。
また、ほ場の面積が狭く点在し、作業効率の悪さなどが課題だった埼玉県東松山市(毛塚地区)では、各耕作者が現在耕作している最も広い水田を中心に集積を行うとともに、農地耕作条件改善事業等を利用して畦畔撤去等の個人負担が発生しないように調整を進めた。デジタル化した図面でほ場の集積・集約の調整状況を明示し、出し手・受け手への説明を分かりやすくする工夫も凝らしたという。
紹介されている10地域のうち、4地域が平地農業地域、5地域が中山間農業地域、1地域が都市的地域で、作物も水稲を中心に、露地野菜や飼料作物などと幅広く紹介されている。
同省経営政策課は「福井県小浜市のケースでは、目標地図によって地域に安心感が生まれたという効果が生まれており、作成を通じてぜひ地域が前向きになれるように取り組んでほしい」と話している。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】水稲の斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 山口県2025年7月8日
-
なぜ米がないのか? なぜ誰も怒らないのか? 令和の米騒動を考える2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【立憲民主党】「食農支払」で農地と農業者を守る 野田佳彦代表2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【自由民主党】別枠予算で農業を成長産業に 宮下一郎総合農林政策調査会長2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【日本共産党】価格保障・所得補償で家族農業守る 田村貴昭衆議院議員2025年7月8日
-
2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【れいわ新選組】農業予算倍増で所得補償・備蓄増を やはた愛議員2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】集落と農地 地域の要 営農事業部門・広島市農協組合長、広島県農協中央会会長 吉川清二氏2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】若者を育てる農協に 営農事業部門・北海道農協中央会前会長、常呂町農協前会長 小野寺俊幸氏2025年7月8日
-
小泉農相 随契米放出に「政策効果」 市場落ち着けば備蓄水準戻す2025年7月8日
-
トランプ政権の移民摘発 収穫できず腐る野菜「農家に大きな打撃」2025年7月8日
-
【第46回農協人文化賞】常に農協、農家のため 営農事業部門・全農鳥取県本部上席主管 尾崎博章氏2025年7月8日
-
150年間受渡し不履行がなかった堂島米市場【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月8日
-
2025参院選・各党の農政公約まとめ2025年7月8日
-
米価 6週連続低下 3600円台に2025年7月8日
-
【JA人事】JA秋田しんせい(秋田県)佐藤茂良組合長を再任(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JA北九(福岡県) 新組合長に織田孝文氏(6月27日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAかながわ西湘(神奈川県)天野信一組合長を再任(6月26日)2025年7月8日
-
【JA人事】JAえひめ中央(愛媛県)新理事長に武市佳久氏(6月24日)2025年7月8日
-
宇都宮市に刈払機を寄贈 みずほの自然の森公園へ感謝と地域貢献の一環 JA全農とちぎ2025年7月8日
-
岡山の農業を楽しく学ぶ 夏休み特別企画「食の学校2025」 JA全農おかやま2025年7月8日