【2025年農林業センサス】集落調査の継続求め署名提出 学識者2022年11月11日
農林水産省が2025年農林業センサスから農業集落調査を実施しない方針を示したことに反対する学者らが署名活動などを始めた「集落調査の継続を求める署名活動共同代表」は11月9日、藤木眞也政務官に集めた署名を提出するとともに調査継続の要望と提案を行った。
(左から)海老澤衷早稲田大学名誉教授(日本中世史)、
松本武祝東京大学大学院農学生命科学研究科教授(東アジア近代農村史)、
戸石七生東京大学大学院農学生命科学研究科准教授(日本村落史・環境史)
この署名活動の呼びかけ人は40人で11月7日時点で集まった1131名の署名を提出した。これまでに地理学系・歴史系・農学系・工学系にまたがる12学会・1団体が農業集落調査の継続を求める声明を発表している。
要望書では、農業集落調査は基幹統計として国民生活に多大な利益をもたらしており、全国に共通する統計上の地域コミュニティの最小単位として多様なミクロデータの扇の要として、JAや世界農業遺産の調査、研究に活用されていると強調している。
そのうえで今回、廃止の理由として挙げた自治体の個人情報保護条例で調査対象者である集落精通者の情報が得られなかったことについては、11月1日の参院農林水産委員会での総務省の北原官房審議官の答弁を引用して反論している。
答弁は「個人情報保護の必要性との関係で調査対象者の名簿を作成することができずに、調査の実施が困難になった事例はない」というもの。要望書では、農水省が地方自治体を通じて調査票を配布すれば地方自治体との個人情報のやりとりがなくなると提案、地方自治体の自治会連合に「もっと協力を要請すべき」と提起している。
集落精通者について野村農相は8日の記者会見で「いわば長のような人」と話しているが、農水省自体、総務省に対して「あらかじめ自治体とも連携した上で自治会長等を報告者に選定する」と回答している。精通者とは自治会長であり、さらに調査について、地域活動の主体となる自治会等の代表者であれば回答可能な項目、としている(総務省の農林業センサスに対する審査メモに対する回答。2018年7月19日農林水産省大臣官房統計部センサス統計室)。
要望書の提出後、こうした経過もふまえ記者団に対して海老澤衷早大名誉教授は「農水省がしっかり信念を持てば継続できるはず」と話した。
一方、農水省は8日の第3回センサス研究会で農林業経営体調査に集落調査項目を追加するという代替案を示した。
これについて戸石七生東大准教授は「論外。農業者だけでなくいろいろな職業の人が住んでいるのが集落。農業経営体調査では自治会長ではなく社長に聞くことになる。継続性が担保できない」と批判する。
東アジア近代農村史が専門の松本武祝東大教授によると「日本の村は自治村落という性格が独特」だという。「コミュニティとしての内実を調査していくことが日本社会にとって大事」と話す。
海老澤氏らの要望に対して藤木政務官は「代替案」で対応する考えを示しながらも「意見を聞きながら質の高いものにしていきたい」と話した。また、今後は農協の末端組織である実行組合長を集落調査の対象者とすることもできるのではないかとの考えも述べたという。
学識者らの要望は2025年センサスでの農業集落調査はあくまで「これまで通りしっかりやってほしい」というもの。戸石准教授は「基幹統計調査は国民の財産。どこまで大事にしているか、農水省の姿勢が問われている」と訴えた。
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