中小・家族経営の営農意欲継続へ支援策を 衆院農林水産委員会が決議2022年12月8日
衆議院農林水産委員会は12月8日の委員会で7会派が共同で動議を提出した令和5年度畜産物価格と関連対策についての決議を総員賛成で採択した。
委員の質疑終了後、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、日本共産党、有志の会の7会派が共同提案した。
決議のおもな内容は以下の通り。決議採択後、野村哲郎農相は決議内容について「決議についてはその趣旨をふまえ適切に対処してまいりたい」と発言した。
【令和5年度畜産物価格等に関する件】
我が国の畜産・酪農経営は依然として担い手の高齢化、後継者不足が進行しており、とくに中小家族経営における経営の継続を困難なものにしている。
こうした事態に対応するには生産基盤を一層強化する取り組みや次世代に継承できる持続的な生産基盤を創造する取り組みの継続が重要である。
このようななかウクライナ情勢にともなう穀物価格の上昇等による配合飼料等の資材価格の高騰や、新型コロナウイルス感染症等による需要の減少は畜産・酪農経営に対して営農継続が危ぶまれるほどの甚大な影響をもたらしている。とくに飼料価格の高騰は飼料自給率の低い我が国において食料安全保障に関わる問題であることから飼料の輸入依存の脱却をめざすとともに、畜産・酪農経営の安定を図り、営農継続の意欲を維持し高めていくことが重要な課題となっている。
政府はこうした情勢をふまえ令和5年度の畜産物価格および関連対策の決定にあたり左記事項の実現に万全を期すべきである。
(1)配合飼料価格の高騰による畜産・酪農経営への影響を緩和するため、配合飼料価格安定制度を安定的に運営し配合飼料価格の高止まりによる生産者の負担増加を抑制するための対策を着実に実施するとともに、今後の畜産・酪農経営の動向を見定め離農・廃業を回避できるよう必要に応じて追加の対策を講ずること。
また、耕畜連携による飼料用とうもろこし等の国産飼料の生産、利用の拡大、飼料用米、稲発酵粗飼料の生産、利用の推進、草地等の生産性向上、稲わら等の国産粗飼料の広域流通等による国産飼料に立脚した畜産・酪農への転換を強力に推進し、飼料自給率の向上を図ること。加えて飼料穀物の備蓄をはじめとする配合飼料の安定供給のための取り組みを支援すること。
(2)配合飼料に加え単体の濃厚飼料、購入粗飼料の価格高騰等により生産コストが上昇している酪農・畜産経営を支援する施策を講じること。また、新型コロナウイルス感染症で乳製品在庫が高水準にあるなか生乳の需給ギャップを早期に解消するため、生産者による一定期間における生産抑制の取り組み、国産チーズの競争力強化、生産者団体、乳業者による乳製品の在庫対策を支援すること。
その際、生産者の経営継続、所得の安定、将来的な生産力の回復に配慮すること。さらに牛乳乳製品の消費拡大に取り組むこと。
(3)高病原性鳥インフルエンザ、豚熱の感染拡大の防止は現下の家畜伝染病の防疫上、再重要課題である。そのため各種対策を強力に推進し、農場における飼養衛生管理基準の遵守の徹底を図り、感染リスクを低減させる取り組みを支援すること。
また、アフリカ豚熱等の家畜伝染病の流入防止のため水際での防疫措置等の発生予防措置を徹底すること。さらにこれらの措置を着実に進めるため地域の家畜衛生を支える家畜防疫員や産業動物獣医師の確保・育成を図るとともに豚熱の予防的ワクチン接種体制を強化すること。
(4)加工原料乳生産者補給金については飼料等の資材価格の高騰をふまえ中小・家族経営を含む酪農経営の維持が可能となるよう単価を決定すること。集送乳調整金については輸送環境が急速に悪化していること等をふまえ、条件不利地域を含め確実にあまねく集乳を行えるよう単価を決定すること。
また、総交付対象数量については新型コロナウイルス感染症等による需要の減少をふまえつつ、国産乳製品の安定供給が図れるよう適切に決定すること。
(5)肉用子牛生産者補給金制度における保証基準価格等については中小・家族経営を中心とする繁殖農家の経営努力が報われ営農意欲が喚起されるよう生産コストの動向等をふまえ再生産の確保を図ることを旨として適切に決定すること。
また、肉用子牛の価格が短期間で大幅に下落し生産者の経営環境が急激に悪化していることに鑑み、生産者の経営改善を支援すること。さらに肉用牛生産基盤の維持強化を図るため優良な繁殖雌牛の導入、和牛受精卵を活用した和子牛の生産等、酪農経営と肉用牛経営の連携等の取り組みを支援すること。
(6)経済連携協定等がわが国も畜産・酪農経営に与える影響について統計データ等を常に注視し、分析を行いこれを公表すること。また、関税削減や日米貿易協定に基づく牛肉セーフガードの見直し等に対する生産者の懸念と不安を払拭し生産者が経営の継続発展に取り組むことができるよう実効ある経営安定対策を講じること。その際、実施した施策の効果を検証し、適宜、必要な見直しを行うこと。
(7)畜産・酪農経営における経済性や採算性の分析を不断に行い、大規模化の効果やリスク、飼養形態、飼養規模のあり方等を検証し、現場と情報の共有を図ること。
(8)中小・家族経営をはじめとした地域の関係者が連携し地域一体となって収益性の向上を図る畜産クラスターについて、引き続き現場の声をふまえた事業執行に努めつつ、飼料増産や収益性向上等に必要な機械導入や施設整備、施設整備と一体的な家畜導入等を支援すること。
(全13項目 以下、略)
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