2040年には100万ha超の水田で主食用米作付けせず 基本法検証部会で農水省試算 「需要に応じた生産」議論2022年12月12日
農水省は12月9日、第5回の食料・農業・農村政策審議会基本法(基本法)検証部会を開き、「需要に応じた生産」をテーマに議論を交わした。この中で農水省は、主食用米の需要量や作付面積について2040年度の試算を示し、需要量は20年度より約3割少ない493万トンに落ち込み、主食用米を作付けしない水田面積は100万haを超えるとして、増産が求められる小麦や大豆などを中心に畑地化を進めることの重要性を指摘した。
「需要に応じた生産」をテーマに議論が交わされた農水省の基本法検証部会
同省は、検証部会の中で、「主食用米の20年後の国内需要量・作付面積と水田面積の比較」とする試算を提示、この中で主食用米の需要量は、人口減少や消費トレンドなどから試算すると、2020年度実績の704万トンから2040年度には493万トンに落ち込むとの見通しを示した。
また、水田面積は203万haに減ると見込まれるが、このうち主食用米の作付けは96万haにとどまり、主食用米を作付けしない面積が107万haに増えると試算されると説明した。
こうした状況について同省は「ニーズが減る稲作中心の生産体制が温存される一方、需要のある作物への転換が十分進まず、現場では農地余りが進んでいる」と指摘、食料安保の観点からも、畑地化を進め、増産が求められる小麦や大豆、飼料などの生産に転換することが重要ではないかと論点を示した。
こうした説明を受けて各委員が意見を述べた。
三輪泰史委員(日本総合研究所 創発戦略センターエクスパート)は「ニーズに応じた生産がより一層不可欠と考えるが、大胆な畑地への転換には、生産者の所得向上や消費者の満足度向上などがより必要になってくると思う。短期的な需要を近視眼的に追いかけると適切なバランスが崩れるので、農水省が強力なリーダーシップで方向性を示すことが必要ではないか」と指摘した。
茂原荘一臨時委員(群馬県甘楽町長)は「需要供給のギャップが依然として大きな課題であるとわかったが、稲作からの転換について農家を説得するのは経験上難しく、米農家の皆さんが納得する形で主食から需要の高い品目への転換が必要だ。今まで以上の工夫や財政支援を含めた思い切った策が必要と思う」と述べた。
また、生産者側の立場から中家徹委員(JA全中会長)は「大豆や小麦への転換も重要だが、改めてコメの消費拡大や需要創造の視点も非常に重要だ。また、需要にあった生産といわれるが、それが再生産可能な適正価格であったかどうかも検証する必要がある」と指摘した。
同じく生産者側の立場から、山浦昌浩臨時委員(全国農業青年クラブ連絡協議会会長)は「作る品目が異なれば異業種と捉えられるくらい、生産の技術や機械、施設などは全くちがうものになる。そこを強く推すなら最適な地域を国が選定して買い取る姿勢など、農家が安心して挑戦する体制をつくってほしい」と強調した。
一方、二村睦子委員(日本生活協同組合連合会常務理事)は「水田の畑地化が必要であるとの議論の流れがあるが、水田の多面的機能についてはどう変化するのか」と農水省に説明を求めた。これに対して同省は「多面的機能は非常に重要視しているが、農業をすること自体の多面的機能から、より積極的に生物多様性保全に資するものへの転換を求める議論もあり、政策的課題として来年取り組んでいきたい」と答えた。
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