国産小麦の単収はなぜ伸びないか 消費者意識に芽生える産地への応援 基本法検証部会でヒアリング2022年12月13日
農水省が12月9日に開いた「第5回食料・農業・農村政策審議会基本法(基本法)検証部会」では、「需要に応じた生産」をテーマに有識者ヒアリングが行われた。農研機構中日本農業研究センターの関根久子上級研究員は国産小麦の単収の伸び悩みの背景について説明し、「オイシックス・ラ・大地株式会社」の冨士聡子執行役員は、食を通しての社会貢献の高まりなど、消費者の食に対する意識の変化などを報告した。
農水省で開かれた基本法検証部会
同日の検証部会の有識者ヒアリングは、「需要に応じた生産」を考えるうえで、フードチェーンの川上(生産者側)と川下(消費者側)それぞれについての課題を探ろうと、2人の有識者を招いて行われた。
農研機構中日本農業研究センターの関根久子さんは、小麦の自給率向上の実現に必要な国産小麦の単収が伸び悩んでいる背景について世界的にも単収が高いドイツと比較して説明した。
一般的に新品種は旧品種より収量が高く、新品種の普及速度が速いほど単収も向上するが、関根さんは品種別作付け面積で見た場合、日本はドイツに比べて上位5品種で全体の9割近くを占めるなど、上位5品種で全体の半数にも満たないドイツに比べて品種の交替が遅いと指摘。この背景には種子供給体制の違いがあり、ドイツでは民間会社が育種を行い、自家採取でも許諾料を得て品種開発資金に回すのに対し、日本では公的機関が事業費で行っているため新品種開発へのインセンティブが働きにくいなどと説明した。
さらに日本では製粉会社の求める品種を地域全体で栽培することで品種の変化が抑制される事情があり、個々の生産者が試験的な栽培もしながら複数品種を栽培するドイツと比べて普及する品種が限定的になりがちであると指摘した。ただし、愛知県や滋賀県などは品種交代を通して単収が向上している地域があり、日本でも単収を伸ばしていけることを報告した。
また、「オイシックス・ラ・大地」の冨士聡子さんは、コロナ禍などを通して感じている消費者の意識の変化などについて報告した。
冨士さんは、野菜を丸ごと購入する形からダイコンは半分、ニンジンは少しなどと半加工品の市場が大きくなっていることや、世界情勢などを踏まえて消費者が食料自給率の向上や食品ロス削減への貢献に敏感になってきていると指摘、同社は2000年の創業当初はこだわりの野菜をメーンに扱っていたが、今はレシピと食材が必要な分だけ入ったミールキットが主流で、1億食を突破するほど需要が伸びていると報告した。
また、コロナ禍で消費者が生産者を応援する機運も感じていると話し、豊作で余ったものを使った加工品などは、安いという価値観が当たり前だったが、最近は高くても購入するなど、社会貢献という価値に対してお金を支払うという変化があり、会社として川下の消費者の変化を川上の生産者に伝えながら、需要と供給を合致させるよう取り組んでいると説明した。
そのうえで、冷凍野菜は海外産を使っているものの国産化を求める声は非常に多く、冷凍野菜だからここまでおいしくなるという変革ができれば輸入に置き換えられているシェアを回復するチャンスになるなどと提案した。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日