値上げしてもコスト上昇分カバーできず約9割 日本農業法人協会2022年12月20日
日本農業法人協会は「第2回農業におけるコスト高騰緊急アンケート」の結果を12月16日に公表した。
このアンケートは5月実施の第1回アンケートから半年経過した状況を約2000法人に改めて聞いたもの。
肥料・飼料など経費は2021年10月比で「上昇」したとの回答が97.2%を占めた。
値上がり幅は「1.3倍以上~1.5倍未満」が33.5%ともっとも多かったが、畜産では「1.5倍以上」が54.0%を占め厳しい状況が浮き彫りになった。
コスト上昇にともない「価格転嫁した」は45.0%で前回調査より16.3ポイント上昇した。一方で「値上げできていない」「値下げした」が55.0%であり、過半は販売価格にコスト上昇分を転嫁できていないことが実態であることも示された。
価格転嫁した割合が多かったのは「果樹」の23.1%、「畜産」21.8%。「果樹」では「消費者への直接販売」が多く、消費者に生産現場の状況を訴えて「自社の裁量で販売価格を決定できた」ことが背景にある。
「畜産」は「値上げ交渉において、客観的な経営上の数値やその資料を用いて具体的に交渉した」ことで理解が得られたという回答が多かったという。
価格転嫁に向けた努力としては「日頃から交渉相手と情報を密に共有している」がもっとも多く、次いで「値上げ交渉時に客観的な数値や資料により具体的に交渉している」が続く。法人協会は価格転嫁できた要因について、コスト削減に向けた経営努力や産地の状況と業界の動向などを「綿密にかつ客観的・具体的に伝える努力をすることがカギ」とみている。
ただ、価格転嫁によってコスト上昇分をカバーできていない法人は88.9%と約9割で販売価格の値上げが不十分であることが明らかになった。
農業経営を維持する適正な販売価格の形成に向け「公的な制度や仕組みが必要」との回答は77.4%となった。
今後、周辺農家で見込まれる動きは「廃業または倒産の増加」が最多(335回答)で「荒廃農地が増加する」が続く(194回答)。法人協会では「食料の安定供給に向け、農業地域の維持・発展の取り組みを確実にしていくことが、待ったなしの状態」と強調している。
食料の安定供給に向けて、「利益が見込まれる需要のある農産物の生産」には90.9%が意欲を示す。このうち29.4%は「新たな品目であっても生産を始める」と非常に積極的な回答も少なくない。ただし、課題としてもっとも多く挙がったのは「労働力不足」。需要に応じた生産を一層推進していくには労働力の確保など生産面での環境整備がカギとなる、としている。
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