化学農薬の低減 21年度実績来年1月公表 肥料は3月 農水省2022年12月28日
農林水産省が12月23日に発表した「みどりの食料システム戦略」の取り組み状況によると、化学農薬の使用量低減に向けた2021年度の実績は来年1月、化学肥料の使用量低減の実績は同3月ごろに公表する予定となっている。
みどり戦略では2050年までに化学農薬使用量をリスク換算で50%低減をめざすとしており、2030年目標を10%低減とした。
これまで農業資材審議会農薬分科会で化学農薬KPIのリスク換算の求め方について議論し整理した。
算出方法は「有効成分ベースの農薬出荷量」×「リスク換算係数」(ADI=許容一日摂取量に基づき設定)とされ、基準年の2019農薬年度のリスク換算値は「23330」と算出された。2050年にはこれを「11665」と50%低減させるのが目標だ。
これに基づき2021農薬年度の実績を23年1月に公表する予定としている。
2022年度の取り組みでは、総合JA562と47都道府県との計600地区で4月までに栽培暦の点検を終えた。現在の栽培暦について、病害虫に対する「スケジュール防除」など無駄な使用につながる暦となっていないかなどを点検した。
また、全国約100地区で栽培暦の見直しに向けた化学農薬の使用量低減実証を支援した。ドローンによるピンポイント散布で30~50%削減した事例も報告されている。農水省は2023年以降も使用量低減の実証を毎年全国100地区で支援し、栽培暦へ反映させ、優良事例の横展開を加速させるとしている。
そのほか5月に成立した改正植物防疫法(23年4月施行予定)に基づき、23年度中に全都道府県が総合防除の実施に関する計画を策定できるよう支援するとともに、都道府県やJAと連携し、地域の栽培暦をその計画に即したものに見直すなど、総合防除を推進する。
23年中に天敵農薬に関する評価手法についてガイドラインを策定するとともに、バイオスティミュラントなど新規農産資材の取扱いルールも検討する。
化学肥料は2050年までに使用量の30%低減をめざし2030年目標を20%低減としている。基準値は90万t(2016肥料年度)で30年には72万t、50年には63万tが目標となる。2021年度の実績値は23年3月ごろの公表予定となっている。
22年度は化学肥料の使用量低減に資する栽培技術を59地区で実施したほか、スマート農業の導入支援事業で可変施肥機を57台導入した。
23年度以降は堆肥や下水汚泥など国内資源の活用を進める仕組みの構築と、化学肥料低減に資する栽培技術の実証成果の横展開を進める。
有機農業の取り組みは、基準年の2017年の2.35万haを2030年には6.3万haに拡大するのが目標だ。2020年の取組面積は2.52万haで基準年より1割拡大した。21年実績は23年6月ごろの公表予定となっている。
2022年度は55市町村がオーガニックビレッジ創出のための取り組みを開始した。有機農業に取り組む農業者に対して技術指導を行う有機農業指導員を累計366人育成した。年度末までに累計500人以上の指導員を育成する予定になっている。
2023年以降は、モデル産地として、オーガニックビレッジを2025年までに100市町村、2030年までに200市町村を創出することが目標で、有機の栽培技術を提供する民間団体の活用で技術の横展開を加速化する。
みどり戦略の取り組みでは「みどりの食料システム戦略推進交付金」(2021年度補正と22年度当初予算)を活用し、環境負荷低減をめざした栽培体系への転換などに全国で318件が取り組んでいる。
滋賀県の長浜市、彦根市では水稲やブロッコリーなどに牛糞ペレット堆肥を活用し、発酵鶏糞との併用などで慣行栽培比5割以上の低減を目標に実践している。22年度のブロッコリー栽培では約3割の化学肥料低減が見込まれている。
宮城県の大崎市有機農業・グリーン化推進協議会は、アイガモロボットによる雑草抑制に取り組んでいる。これにより除草剤の散布回数の1~2回程度の削減をめざしている。
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