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持続可能な農業を主流化 国民理解と負担が課題 基本法検証部会2023年1月16日

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食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会が1月13日に開かれ、「持続可能な農業の確立」をテーマに議論した。

1月13日の基本法検証部会1月13日の基本法検証部会

旧農業基本法では農業の食料供給機能だけを規定していたが、現行基本法では農業の外部経済効果を多面的機能として位置づけた。

基本法では多面的機能を4つの理念の一つに位置づけ、WTО(世界貿易機関)農業交渉で農業には国土保全などの機能を持つことを主張する根拠とした。

2001年には農相の諮問を受けた日本学術会議が農業の多面的機能の貨幣評価を行っている。それによると水田や畑の洪水防止機能は約3兆5000億円、河川流況安定機能は約1兆4600億円、保健休養・やすらぎ機能は2兆3700億円など、合わせて8兆2226億円と評価した。

ただ、その後、地球温暖化防止や生物多様性保全の議論のなかで、農業も環境に負荷を与えるという外部不経済効果も指摘されるようになった。具体的には2001年以降、国際的に浸透し始めた農業もエコシステムの一部とする「生態系サービス」の概念である。

この概念では1つの生態系サービスを追求すると、別の生態系サービスに悪い影響をもたらすというトレードオフの関係があるとして、食料供給サービスである農業が国土保全や自然環境にマイナスの影響を与える可能性もあると考えられている。

こうした考え方に加え、地球温暖化への対応やSDGsの設定などを受けて、化学農薬・肥料の使用低減、ゼロカーボン、さらには人権配慮、アニマルウェルフェアなど社会的課題も提起され、各国では持続可能な農業を主流にすべきとの方向が強まってきた。

日本でも農水省はみどり戦略を策定し関係法も施行された。

この日の検証部会で農水省は論点として、わが国も食料供給を生態系サービスの1つと位置づける国際的な議論に合わせて「持続可能な農業を主流化する必要があるのではないか」と提起した。また、フードチェーン全体で食品ロス削減や持続可能性に配慮した輸入原材料調達、小売や流通、消費者の行動変容などの取り組みの必要性や、有機農業など持続可能な農業を一部の人ではなく地域全体で進める仕組みを推進する必要があることも提起した。

一方、国民の意識の低さを表す調査結果も示した。環境や社会に配慮した商品を購入するとの回答はわずか7%にとどまり、有機農産物を購入したいと思わない理由のトップは「値段が高いから」であり、環境に配慮した農産物についての考えは「一般の商品と同等の価格なら購入」が50.3%を占めた。

意見交換でJA全中の中家徹会長は、環境に配慮した農産物であることを認証する仕組みを作っても、「高いから買わない」ということになる国民の意識も懸念し「有機に限らず農家の努力を評価しないと持続性はない」と指摘し、基本法の見直しでは再生産可能な農業を盛り込むことや、8兆2000億円を超える農業の多面的機能についても改めて評価すべきではないかなどと話した。

堀切功章キッコーマン代表取締役CEОは、持続可能な農業と食品産業の実現は業界にとってコスト要因になるが、「持続可能性にはコストがかかることに理解醸成が必要。食育や環境教育が大事になる」と指摘した。

寺川彰丸紅副社長は持続可能な農業の実現にかかるコストは「消費者が負担する。ただ、それが価値あるものであることを理解してもらう活動をするべき」と話すとともに、メタン削減など環境に配慮した農業を実践しない生産者には「ペナルティも考えてどうか」と提起した。

一方、二村睦子日本生協連常務理事は農業が環境負荷を生じていることをふまえ、持続可能な農業は「それを低減した取り組みだと理解していく必要がある」との考えを示した。また、負担についても意識の高い人だけが支えるだけでどの程度まかなえるのかとの疑問も示し、価格転嫁だけではない「社会全体で支える仕組み」の検討の必要性も指摘した。

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