農村人口減で営農困難30万~70万ha 高まる食料安保リスク 基本法検証部会2023年1月30日
農林水産省は1月27日に開いた食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会に人口減少で農村のコミュニティ機能が失われ、営農継続が困難になる農地面積が2050年には約30万ha~70万haになるとの試算を示した。食料安全保障の観点からも、日本では農村人口の維持・増加が大きな課題となっている。
1月27日に開かれた基本法検証部会
日本の人口は2009年をピークに減少に転じた。過疎地域の人口減少は社会減より自然減のほうが大きくなっている。
そのなかで農業集落の小規模化が進んでおり、農地保全活動などコミュニティ機能が失われるされる「人口9人以下」の小規模集落の割合が増え、中間地域では2000年の4.4%が2015年に7.7%へと増え、山間地域では8.8%が17.9%に増えた。
同時に混住化も進み、1農業集落当たりの農家率は7.5%(2015年)となっている。
農水省の試算では2050年に人口9人以下の集落の農地面積は31万ha、コミュニティ機能の維持が困難になる高齢化率50%以上の集落では67万haになる。さらに人口9人以下で高齢化率50%以上の存続が危惧される集落の農地面積は26.9万haと試算している。
2050年には約30万~70万haの農地が農村人口の減少で営農継続のリスクが高いと指摘。70万haは現在の農地面積の15%程度にあたる。
一方、中山間地域の人口は全国の約1割だが、耕地面積、農家数、農業産出額はいずれも全体の約4割を占め、2000年以降もその割合は変化しておらず、農業・農村のなかで重要な役割を果たしている。
農村に一定の人口を確保するため、政府は東京圏から地方への移住者を2027年度に年間1万人とする目標を掲げるほか、二地域居住など関係人口の創出も促進するほか、農水省では農村の地域資源をフルに活用した観光、福祉など多様な事業を起こす取り組みも支援し、移住者を増やす施策も打ち出す。
ただ、人口が減少することによって農村の共同活動によって管理してきた水路など農業インフラの維持が課題となることも見込まれ、農水省は末端インフラの管理を「食料安全保障の問題として捉える必要がある」として、管理のあり方を検討すべきとの考えを示した。
また、現行基本法では触れていない鳥獣被害対策についても、農業被害だけでなかう「住民の安全確保」の観点からも体制整備が必要ではないかと提起した。
委員からは「農村に人が住み続けることは食料安保に直結する問題」だとして、水路管理などの共同活動を法律で位置づけ広く国民が負担することも検討すべきとの指摘が出た一方、「選択と集中」の観点から、将来に向けて存続可能性のある地域とそうではない地域を検討する必要があるとの意見もあった。
また、地方の都市機能を農村と結びつけて都市機能にアクセスしやすい地域として整備するなど、どのような農村の姿を描くかを整理しそこに向けた施策を考える必要性が指摘されたほか、地域住民自身が非農家も含めて「危機感を見える化」して地域活性化に取り組む必要性を指摘する意見や農業インフラの維持も含め地域を熟知しているJAの役割発揮を期待する声もあった。
農水省は、集落の水路などはこれまで共同体で維持してきたために問題とならなかったが、今後は「食料安保維持のため農業インフラをどう管理するかしっかり考えなくてはならない」と改めて強調し、複数の施設を同一主体が管理するなど、管理のあり方も検討する考えを表明した。
農村の活性化は課題だが、JA全中の中家徹会長は「農業経営が元気であれば農村は元気。表裏一体だ」と指摘し、日本農業法人協会の齋藤一志副会長も「農業で飯が食える姿がないと人は増えない。安定的な経営が継続できる政策を」と訴えた。
次回は2月10日に開かれる。食料安全保障の観点から備蓄のあり方、食品安全、知的財産がテーマ。また、農水省が昨年12月に決めた「食料安全保障強化政策大綱」についても委員に説明するともに、今後の検討の進め方についても提示する。
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