乳製品の輸入枠数量 23年度生乳換算13万7000t 農相が運用検討も示唆2023年1月31日
農林水産省は2023年度の国家貿易によるバターと脱脂粉乳の輸入数量枠をWTО協定で約束している最低数量(生乳換算で13万7000t)とすることを1月27日に決めた。ただ、生産を抑制しても脱脂粉乳の在庫が過去最高水準となるほど積み上がることが見込まれるなかで輸入を見直すべきとの声も出ている。野村農相は1月31日の会見で運用の検討を示唆した。
バターと脱脂粉乳の輸入は国内需給に影響を与えないよう農畜産業振興機構を通じた国家貿易を基本としており、毎年1月に翌年度全体の数量を示し、5月と9月に増減の必要性を検証することになっている。
生乳需給は引き続き緩和しており、とくに脱脂粉乳はヨーグルトなどの需要低迷で在庫量は昨年12月末時点で8万tを超える高水準となっている。バターも需要が回復傾向にあるが在庫は十分にある。
こうしたことから2023年度の輸入枠は22年度同様にWTО協定で約束している最低輸入数量にとどめ生乳換算で13万7000tとする。
品目別の輸入量は▽脱脂粉乳750t(生乳換算:約5000t)とホエイ4500t(約3万1000t)、▽バターオイル185t(約3000t)、▽バター8000t(約9万8000t)とする。
脱脂粉乳の750tは日米貿易協定に基づく輸入機会の提供として定められた量。
バターオイルは需要が見込める量として設定し、22年度の500tから185tへと減らした。一方、バターは22年度7600tから増やす。
バター、脱脂粉乳の生乳換算輸入量13万7000tについて立憲民主党の逢坂誠二議員は30日の衆議院予算委員会で「北海道で今年生産抑制する年間搾乳量と同じ。カレントアクセスを一時的に停止すると判断すべきではないか」と岸田首相に質問した。
岸田首相は、WTО協定に輸入機会を提供する法的義務を負っているとして、「今はこの法的義務の範囲内でできるだけ国内需給に配慮しながら製品を輸入している状況」と答弁したうえで、「それ以上のことができるかは、法的義務との関係でどうなのか、政府として検討したうえで方策について議論を進めていきたい」と述べた。
岸田首相の答弁を受けて野村農相は31日の会見で米の輸入義務に関する政府統一見解をふまえて対応を検討したいと述べた。ミニマム・アクセス米については、輸出国の不作や災害などで生産が大幅に減少し輸出できない場合に輸入義務を満たさないことも認められるとしている。それがない限りは輸入国の事情で輸入を止めることが難しいというのが政府見解だ。これについて野村農相は「生乳にもあてはまるかどうかは検討を進めたい」と述べた。
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