集落調査 幅広い十分な議論を 中山間地域フォーラムが緊急提言2023年2月6日
農山村地域を支援する研究者や実務家などで構成する中山間地域フォーラムは2月3日、農業集落調査に関する緊急提言書を農水省に提出した。
左から生源寺氏、小田切氏、野中氏
農水省は昨年、農林業センサス研究会の場で2025年センサスから集落調査を廃止を提案したものの、同研究会委員や学会などから廃止撤回を求める声が出て、代替案を2回提案しているがこれにも強い批判が出ている。農水省は2月にも第3次代替案を提示し結論を得る考えを昨年12月に示していた。
これに対して中山間地域フォーラムは「拙速を避け幅広いステークホルダーの十分な意見聴取をして議論されるべき」との緊急提言をまとめ、同日、会長を務める生源寺眞一福島大学農学群食農学類長、副会長の小田切徳美明治大学農学部教授と野中和雄国際農業者交流会会長が農水省を訪れ山田英也統計部長に手渡した。
緊急提言では、2020年の調査法が次回はなぜ実施できないのかを明確にすべきだとしている。農水省は14万集落のうち5万集落で個人情報保護条例などを理由に情報提供が得られなかったとしているが、提言は市町村への協力要請は統計法の規定に基づくものであり、農水省はどのように協力要請を行い、それにどのような回答があったのか、再度協議する余地はないのかなど、「プロセスを含めた情報開示が不可欠」だと強調している。
また、現行の基本計画では「農村の実態について農林水産省が中心になって現場に出向いて直接把握」としている施策と調査廃止は矛盾しないのかと指摘している。
さらに、今回のように唐突な廃止提案と、代替案の提案が短期間で行われることに対して「国や社会の羅針盤としての統計が軽く扱われている感を強く持たざるを得ない」として、「農林業センサスは国の基幹統計。今後の集落調査については農村のコミュニティの実態をどのように捉え、未来の農村政策をどのようにしていくかを展望して議論すべきではないか」と提起している。
生源寺会長は田園回帰の動きもあるなど「農村集落そのものが変わりつつある」として調査継続が重要だと話し、私見として2025年センサスは2020年の調査形式の継続を提起した。その際、統計法上の市町村の役割を改めて明確にするとともに、市町村の農業委員会や農協などの支援も視野に入れた実施体制も必要ではないかと話した。
小田切副会長は調査廃止の提起は、産業政策と地域政策を車の両輪として重視する基本計画から「産業政策重視へと後退し始めているのではないか。農村政策の位置づけが心配だ」と懸念している。
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