民間備蓄や海外在庫など総合的な備蓄を 基本法検証部会2023年2月13日
食料・農業・農村基本法の見直しに向けた審議会基本法検証部会の第9回会合が2月10日に開かれ、備蓄、食品安全・食品表示、知的財産の考え方について農水省が提示し意見交換した。これまでの議論を受けて次回の2月24日の会合で農水省は「基本理念」を示す。ここでは「備蓄」についての議論を紹介する。
現在、国は米、食糧用小麦、飼料穀物の備蓄を実施している。
米は棚上げ備蓄方式で100万tを備蓄している。10年に1度の不作(作況92)や、通常程度の不作(作況94)が2年連続したときにも、緊急輸入せずに国産米で対処できる水準として設定された。
一方、輸入に依存している食糧用小麦は需要量の2.3か月分の90万t程度を備蓄している。過去の港湾ストライキ、鉄道の遅延などの経験から代替輸入には4.3月程度が必要だが、すでに契約が済み日本に向かって輸送中の小麦が2か月分程度あることから、国内での備蓄量は差し引き2.3か月程度とした。
また、飼料用穀物は100万t程度備蓄している。海上輸送中のものが100万tあるため合わせて2か月分程度のストックとなり、この間に代替輸入国への変更が可能だとしている。これまでに備蓄を活用した最大実績は東日本大震災の75万tとなっている。
食品用大豆の備蓄も1974年から実施され需要量の約1か月分を備蓄してきたが、一度も放出が行われなかったことから年約3億円の財政負担を減らすため2010年度に廃止した。
一方、昨年5月に成立し12月に施行された「経済安全保障推進法」では肥料を特定重要物質に指定、2027年までに年間需要量の3か月程度の備蓄を行う体制づくりを検討している。
検証部会で農水省は備蓄は倉庫での保管経費などコストがかかる仕組みだと強調した。米100万tの保管経費は約113億円、売買損が約▲377億円で計490億円かかる。1t当たり約4万9000円になる。
麦は約42億円、1t当たり約4700円、飼料穀物は約15億円、同約1900円とのコストを示した。
こうした数値を挙げたうえで農水省は、すべてを国内の倉庫で保管する考え方ではなく(1)国内の生産余力、(2)国内の民間備蓄、(3)海外の生産農地(日本向け栽培)、(4)海外の倉庫の在庫、(5)海外からの輸送過程などを含め、「総合的な備蓄」として評価すべきではないかとの考え方を示した。
米の備蓄量については900tの需要があった2001年当時と同水準であり、需要量700万tの現在の状況をふまえ見直すべきとの意見もある。
中家徹JA全中会長は「100万tの米の備蓄水準は食料安保の要であり象徴。備蓄量については棚上げ備蓄方式をふまえて慎重に検討を」と求めたほか、麦や飼料作物については国内で増産する方向を打ち出していることから「国産を優先的に備蓄に活用することを前提に検討を行うことが必要だ」と主張した。
農水省は需要量が減少した現在でも100万tを備蓄する財政負担について国民への説明が必要になることや、民間在庫の意義も検討すべきと指摘した。一方、麦、大豆、飼料作物の増産を進めるなかで、安定的に供給するため調整保管の仕組みなどが必要になるとの考えを示した。
その他、二村睦子日本生協連常務は備蓄の強化が必要だとしながらも「それ自体が目的になった過剰になるのは無駄。無駄にならないよう用途を確保すべき」などと話した。柚木茂夫全国農業会議所専務は家庭内備蓄の考え方を検討すべきことや「国内の生産余力」の考え方を明確にすべきと指摘した。
寺川彰丸紅副社長執行役員は備蓄水準について将来予測を踏まえて決めるべきであり、米については「余剰米は輸出すべき」と指摘した。
また、海外での日本向け生産について「日本向けメリットがなければ栽培しない。また、契約したからといって食料が入手できるものではない」と国際関係の不透明さを指摘、海外に備蓄をするには同盟国のような枠組みをどう作るかなど外交の問題として考える必要性も提起した。肥料の備蓄については国際価格が「ピーク時に比べて半額になっている」として備蓄する業者にとってはリスクとなる問題も挙げた。
そのほか加工食品の備蓄など、食のスタイルが変化するなかでの備蓄のあり方も検討すべきとの意見も出された。
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