基本法の見直しに意欲-野村農相 24日に基本理念議論2023年2月16日
野村哲郎農相は2月14日の閣議後の会見で食料・農業・農村基本法について「部会の議論をしっかり受け止めながら基本法の見直し、検討を進めていきたい」と意欲を語った。24日に農政審基本法検証部会を開き「基本理念」を議論する。
野村農相は昨年9月29日に岸田首相の指示を受け、食料・農業・農村基本法の検証を審議会に諮問、審議会に基本法検証部会を設置し10月18日の第1回会合から今年2月10日の第9回会合までわが国の食料、農業、農村の変化と課題などを有識者からのヒアリングと委員との意見交換を行ってきた。
記者会見で野村農相は「農産物の輸入リスクが高まっているので平時から食料安全保障を考える必要があるのではないか」、「食料安全保障の定義や持続可能な農業の在り方について国際的な議論が進んでいる」、「人口減少・高齢化をふまえた農業・農村施策を考える必要がある」などの指摘が出ているとして、部会の議論をしっかり受け止めて検討を進める考えを示した。
次回は2月24日に部会を開催し「基本理念」を議論する。農相は総理から6月中には方向をまとめるよう指示を受けているとして、与党とも打合せをしながら「まとめ上げていきたい」と話した。
これまでの部会で農水省が示してテーマごとのポイント(〇)や論点(◎)の概要は以下のとおり。
【食料の輸入リスク】
〇世界の食料需要は増大するなか、日本の輸入シェアは低下、購買力も低下。
◎輸入に依存する食料の国産化、肥料についてはたい肥などの国内資源の有効活用を進める必要があるのではないか。
【国内市場の展望と輸出の役割】
〇持続可能な農業の確立のため縮小する国内市場だけでなく成長する海外市場も視野に入れた政策が必要。
◎食料安保の観点から海外市場も志向する産業に転換する必要があるのではないか。
◎国内市場については必要以上に国内生産が縮小していくことを避け、持続的な農業のため適正な価格形成の在り方について検討する必要があるのではないか。
【国際的な食料安全保障】
〇国際的には食料安保に「国民1人1人が健康な食生活を享受できること」を位置づけることが主流。
◎食料安保を平時の問題として捉え、食品アクセス困難者や経済的弱者への対策の在り方も考える必要があるのではないか。
◎不測時の食料安保の定義の明確化と対応を改めて検討する必要。
【担い手の確保】
〇今後20年で高齢者がリタイアした後、基幹的農業従事者数は120万人から30万人へ激減のおそれ。
◎引き続き一定の農業生産を担う個人経営を発展を支援する必要がある一方、農業法人について果たすべき役割を明確化し経営発展を支援していく必要があるのではないか。
◎多様な手法で多様な人材の就農を促すことが必要ではないか。
【需要に応じた生産】
〇食料安保の観点からは農地の有効利用が必要だがニーズが減少する水稲作中心の生産体制が温存される一方、需要のある作物への転換が進んでおらず現場では農地余り。◎「地域計画」も活用し水稲を作付けている水田を畑地化し耕地利用率を高めつつ、食料安保上、増産が求められる小麦、大豆、野菜、飼料等の生産に転換することが重要。
【生産性向上・技術開発】
◎とくに国産化が求められる品目を中心に生産性の向上を推進していく必要があるのではないか。◎スマート農業の導入が重要。目的は付加価値の拡大を図るための生産性向上とするべきではないか。
【持続可能な農業】
〇持続可能な農業を主流化すべきという方向で各国は農業施策を見直し。〇みどり戦略の取り組みは一部の人にとどまり全体に至っていない。消費者意識の醸成も必要。
◎わが国においても食料供給を生態系サービスの1つと位置づける国際的な議論に合わせ持続可能な農業を主流化する必要があるのではないか。
◎フードチェーン全体で持続可能性に配慮した輸入原材料調達、小売・流通、消費者の行動変容など取り組みが必要ではないか。
【農村の振興】
〇農村では人口減少、高齢化のスピードが速く、集落の小規模化や高齢化による集落活動の停滞、生活環境の悪化の懸念が高まっている。
〇食料安保の観点から農村問題と一体で捉えてきた用排水施設などインフラの維持が重要。
◎農村部への移住、関係人口の増加、起業による就労機会の増大などに向け、関係省庁や自治体、民間企業と連携して取り組む必要があるのではないか。
【備蓄】
◎備蓄は少なくない費用負担を伴う仕組み。輸入に依存している品目についても生産余力や民間在庫、海外での生産、保管状況などを総合的に考慮する必要があるのではないか。
【食品安全・食品表示】
◎食品安全の確保は国民の健康保護はもとより、産業競争力とも直結。
◎食品表示制度は国際基準との整合性をふまえ見直しを進めていく。
【知的財産】
◎知的財産の活用は農業競争力の維持強化に不可欠。
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