種子法違憲訴訟 農家らの訴え退ける 「食料への権利」に直接触れず 東京地裁2023年3月27日
主要農産物種子法(種子法)を廃止したのは憲法違反だとして、全国の市民や農家が違憲の確認などを求めて訴えた裁判で、東京地方裁判所(品田幸男裁判長)は3月24日、原告らの訴えを棄却した。原告らは「食料への権利」がわが国の憲法上の権利であることを訴えていたが、裁判では直接触れなかった。
裁判所に向かう原告団(東京地裁で)
種子法は国が良好な種子を安く供給することで戦後の食料増産を可能にし、国民の食料を確保することができた。しかし、国はその目的は達成されたとして2018年に種子法を廃止。この結果、原種の価格が3倍に高騰するなどの影響が出始めているところもある。
一方、種子法廃止によって法律上の根拠がなくなり、地方自治体による種子供給の事務にも差し障りが生じている。このため、都道府県で独自に条例を設けて種子供給を維持するところがふえているが、財政基盤の弱い地方自治体の措置が将来とも続く保証はない。
原告側は訴えの中で、①食料への権利は憲法25条(生存権)で認められる基本的人権であること、②種子法廃止は食料への権利を保障する憲法に違反すると主張し、争っていた。
「食料への権利」について、判決では直接触れず、①種子法の施行によって、原告らの権利・利益が侵害されていない、②種子法が憲法上の権利を具体化したとは言えないなどとして、原告らの訴えを退けた。つまり、種子法廃止に対応して県条例を制定し、従来通り、種子の供給を確保しているなど、原告の主張する権利の侵害はなかったとした
「食料への権利」については、種子法は「食料への権利に係る名分の規定はなく、また、国民の権利を持つ主体として位置付けるなどの具体的な根拠となる規定もない」とした。
ただ判決では、憲法25条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の実現へ向けて、一定の衣食住の保障が必要となる事は否定できないとして、「食料への権利」について、憲法25条で保障される余地があることに言及した。
判決後、種子法廃止違憲確認訴訟原告団は、判決は不当として抗議声明を出すとともに、食料への権利が憲法上の権利であること、種子法がこの権利を具体化することを再度主張することを表明し、控訴する意向を示した。
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