「国民のための基本法に」有機農業や農地、種子などめぐり意見交換 民間団体、学者と農水省職員2023年3月30日
「食料・農業・農村基本法」の見直しに向けた議論が進む中、有機農業などに取り組む民間団体や学者らが農水省職員と意見を交わす会合が3月29日、農水省で開かれた。参加団体からは環境や農地、種子、食育などそれぞれ専門的に取り組む幅広い分野について基本法での位置づけを求める提言や意見が相次いだ。
オンラインも含めて約180人が参加した意見交換会(農水省で)
意見交換会は全国有機農業推進協議会などの呼びかけで開かれ、オンラインも含めて全国から市民団体や学者など約180人が参加した。はじめに同会の下山久信理事長が「基本法見直しは日本農業の再生にかかる話であると考えており、活発な意見、提案をお願いしたい」とあいさつした。
会場では農水省の担当者から基本法検証部会のこれまでの議論が説明されたあと、出席団体のうち10数団体がそれぞれ基本法見直しにあたって提言や意見を述べた。
提言は環境問題から農地、種子、教育など幅広い分野に及び、有機農業を推進する団体は「2020年の基本計画には記述されていない生物多様性をきちんと盛り込むべきだ。また、基本的農業従事者が20年後には30万人になる可能性があり、国民みんなが農業に関わる形にせざるを得なくなるのではないか」と指摘した。
種子に関する分野からも複数の提言が出され、主要農作物の優良種子の安定供給のための財源確保や、種子の独占による弊害を防ぐため、日本農業の強みでもある「地域性に富んだ多様な食と農」の維持に向けて、支援策の充実強化を求める意見が出された。農地をめぐっては、「外国資本に農地が買われることになるのは大きな問題だ。外資規制についても基本法でどう扱うか考えるべきだ」との指摘も出された。
また、食育に関して会場から「農業についてきちんと教えてこなかったため、そうした教育を受けた世代が農業へのリテラシーが低い状況がある。食育基本法をどう今回の基本法にリンクさせるのか知りたい」との質問も出され、担当者は「まさに議論している最中だが、消費者や将来を担う子どもたちに農業を知ってもらうことは重要であり、しっかり対応したい」と答えた。
司会を務めた「フードトラストプロジェクト」の徳江倫明代表は「1961年の農業基本法の対象は農家であり、1999年の食料・農業・農村基本法は対象をサプライチェーンまで広げたが国民のためという広がりはなかった。意見交換を通して『国民のための基本法』と明確に打ち出してほしいと感じた」と締めくくった。
全国有機農業推進協議会などは今後も論点を整理して政党などとの意見交換会も開いていくことにしている。
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