「新味は乏しいが輸入国・日本の立場は反映された」 G7農相会合の成果は 明治大学・作山巧教授に聞く2023年4月24日
宮崎市で開かれたG7農相会合は4月23日、閉幕し、食料安全保障強化に向けた大臣声明などが採択された。気候変動やウクライナ危機など世界的に農業を取り巻く状況が厳しさを増す中、日本が議長国としてリードした農相会合にはどんな成果があったのか。かつて農水省で国際交渉官としてG8農相会合(2009年)やAPEC食料安全保障担当大臣会合(2010年)などに参加した明治大学の作山巧教授(貿易政策論)に聞いた。
明治大学 作山巧教授
ウクライナ危機などにより食料安保が主要テーマとされる中、まず今回の会合には何が求められたのか。作山教授は「食料輸入国の日本としては、肥料の輸出規制で資材価格が高騰して農家が大変厳しい状況にある中、輸出国寄りの市場開放優先から、自国資源の有効活用や輸出規制への制限強化をきちんと打ち出せるかが焦点だった」と指摘する。
今回採択された大臣声明では、「持続可能な生産性の向上を支援する政策の促進にコミットする」との文言が盛り込まれ、農水省は「農業の生産性向上と持続可能性の両立を打ち出すことができた」と成果を挙げる。
しかし、作山教授は「『生産拡大』ではなく、『生産性向上』とは単位当たりの面積で生産量を上げることであり、反対する国はいない。この表現が新しいとは言えない」と指摘した。ただし、「以前は貿易の拡大が重視され日本は押され気味だったが、生産性向上や国内資源の有効活用など輸入国の立場がより反映されたトーンになっていると感じる」と一定の評価を示した。
また、かつて国際会合に参加した経験から、例えば採択文書にある「既存の国内農業資源を有効活⽤し、⾷料貿易を円滑化しつつ、地元の、地域の、そして世界の⾷料システムを強化する途を追求すべきである」との表現について、「『既存の国内農業資源を有効活用』は日本の主張、『食料貿易を円滑化』は米国の主張であり、多国間の合意となるとこうした形でしかまとめられないといえる」と、大臣声明をまとめる難しさも指摘した。
一方、大臣声明を受けて各国が取り組むべき行動をまとめた「宮崎アクション」については、「行動計画と報じるメディアもあるが、『行動』だけであり、具体的な『計画』はなく、新しさは感じない。大臣声明の中からメッセージの強い部分を抜き出してわかりやすく示したという位置づけではないか」と分析した。
今回の大臣声明や宮崎アクションを受けて、今後、日本には何が求められるのか。作山教授は「大臣声明に法的な拘束力はなく、参加国の意見の最大公約数に過ぎない。日本としては、みどり戦略の実行や価格高騰の影響回避のために、農相会合でPRした堆肥ペレットの推進など、生産資材の輸入依存度を下げ、国内資源の利活用を促進する取り組みを進めることが必要だ」と強調した。
重要な記事
最新の記事
-
【米価高騰・今こそ果たす農協の役割】農協は農家のインフラ 急がれる「備蓄米買い上げ」 神明・藤尾益雄社長インタビュー(下)2025年10月23日 -
現場の心ふまえた行政を 鈴木農相が職員訓示2025年10月23日 -
全中会長選挙を実施 12月に新会長決定 JA全中2025年10月23日 -
花は見られて飽きられる【花づくりの現場から 宇田明】第71回2025年10月23日 -
続・戦前戦後の髪型と床屋・パーマ屋さん【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第361回2025年10月23日 -
「ゆるふわちゃんねる」登録者数100万人突破 JAタウンで記念BOXを限定販売 JA全農2025年10月23日 -
愛知県の新米「愛ひとつぶ」など約50商品「お客様送料負担なし」で販売中 JAタウン2025年10月23日 -
人気アニメ『ゾンビランドサガ』とコラボ「佐賀牛焼肉食べ比べセット」販売開始 JAタウン2025年10月23日 -
佐賀県発の新品種ブランド米「ひなたまる」デビュー記念 試食販売実施 JAグループ佐賀2025年10月23日 -
AI収穫ロボットによる適用可能性を確認 北海道・JAきたそらちと実証実験 アグリスト2025年10月23日 -
西欧化で失われた日本人の感性や自然観とは? 第2回シンポジウム開催 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月23日 -
GREEN×EXPO 2027で全国「みどりの愛護」のつどいと全国都市緑化祭を開催 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月23日 -
食とエネルギーの自給率向上と循環型社会の実現に向けた連携協定を締結 パソナ、ヤンマー、Well-being in Nature2025年10月23日 -
栃木県「那須塩原牛乳」使用 3商品を栃木県内のセブン‐イレブンで発売2025年10月23日 -
都市農地活用支援センター 定期講演会2025「都市における農空間の創出」開催2025年10月23日 -
岩手県山田町「山田にぎわい市」26日に開催「新米」も数量限定で登場2025年10月23日 -
ニッテン×QuizKnock コラボ動画を公開 日本甜菜製糖2025年10月23日 -
北海道の農業法人25社以上が出展「農業法人と求職者のマッチングフェア」開催2025年10月23日 -
福岡市で「稲刈り体験」開催 グリーンコープ共同体2025年10月23日 -
被爆・戦後80年 土浦市で被爆ピアノの演奏と映画上映 パルシステム茨城 栃木2025年10月23日


































