「食料安全保障」を特集 農業白書2023年5月26日
政府は5月26日の閣議で「令和4年度食料・農業・農村白書」を決定した。巻頭では33ページにわたって「食料安全保障」を特集、世界の食料情勢の変化と、将来にわたって国民に食料を安定的に供給していくための取り組みを記述している。
特集では冒頭、「食料の多くを海外に依存している我が国は、将来にわたって食料を安定的に供給していくためのターニングポイントを迎えている」として、今回の特集では、世界の情勢変化と、昨今の農業生産資材価格の高騰が農業経営に与えた影響、食料品価格の上昇による消費者への影響とともに、これらへの対応を記述している。
近年上昇していた穀物の国際価格は2021年以降、大きく上昇し、ロシアのウクライナ侵攻後、小麦は2022年3月には過去最高となる1t523.7ドルまで上昇した。トウモロコシ、大豆の国際価格も過去最高に迫る水準で推移、今年1月以降は、おおむねウクライナ侵攻前の水準となっているが、高止まりしている。
白書ではロシアに侵攻されているウクライナの小麦生産量は前年度比36%減の2100万t、トウモロコシ生産量は同36%減の2700万tの見込みで「著しく減少する見通し」とコラムで紹介、我が国はウクライナからの穀物輸入はほとんどないが「国際穀物貿易や価格に与える影響を注視していく必要がある」としている。
ウクライナ情勢は生産資材価格の高騰も招いた。トウモロコシを原料とする配合飼料は今年1月には前年同月より約2割上がって1t10万円となった。肥料価格は今年2月には前年同月比で39.5%上昇した。
こうした状況のなかで日本政策金融公庫の農業景況調査では前年から9.5ポイント低下しマイナス39.1ポイントと1996年の調査開始以来の最低値となったこともコラムで触れている。
また、食料の輸入量は大きな変動が見られないものの、世界的な価格上昇と円安で輸入額は前年に比べて3割増加し約9兆2000億円となった。白書では「輸入農産物の単価上昇は国産農産物の需要拡大の好機ともなり得る」として、国内産地の生産基盤強化を図り、国産の供給拡大を図っていくことが重要になっていると指摘している。
そのほか農産物の輸入先が米国、中国、豪州など特定の国に偏っていることや、肥料原料も輸入に大きく依存していること、さらに食品にアクセスできない人がわが国にも一定数いること、今年1月の公庫調査では約8割が将来の食料輸入に不安があると回答したことも紹介し、食料安保の強化が重要になっているとしている。
そのうえで高騰する生産資材への対策、小麦・大豆・飼料作物の国産化の推進などの一連の対策、昨年末に決定した食料安全保障強化政策大綱を紹介している。
そのなかで過度に輸入に依存する構造からの転換を着実に進めるとしており、その国内生産強化のため地域農業を支え雇用の受け皿となる担い手経営体の発展を後押しするとともに、地域農業がめざす将来の姿を「地域計画」として策定することが法定化されていることも指摘、小麦や大豆など国内増産が求められる農産物も含めて、地域でどのような農産物を生産するかも含めて検討する」ことが重要となっているとしている。
そのほか食料が持続的に供給できるよう、より環境負荷を低減する農業への転換や、平時から食料安定供給に関するリスクの把握と対応なども求められているとしている。
特集に続くトピックスは輸出、みどり戦略、スマート農業、家畜防疫など取り上げている。
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