ウクライナ危機で「水産物の安定供給脅かされるリスク顕在化」 「水産業の食料安保」を特集 水産白書2023年6月2日
政府は6月2日、2022年度の水産白書を閣議決定した。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、水産業での食料安全保障について初めて特集した。ウクライナ情勢により、輸入水産物の価格上昇など水産物の安定供給に大きな影響を与えたことを指摘し、「我が国では水産物の安定供給が脅かされるリスクを抱えており、それが顕在化した」などとして、水産物の食料安全保障強化が急務だと強調した。
22年度の水産白書では、「我が国の水産業における食料安全保障」を34ページにわたる特集として取り上げた。
この中では、コロナ禍からの経済活動の停滞からの回復に加え、ウクライナ危機によるサプライチェーンの混乱などでカニやサケ・マス類など輸入水産物の価格が高騰したことに触れて、加工原材料の確保が困難になった水産加工業者の調達先の多様化を支援したことを記述した。
また、農水省が食料の安定供給に影響を及ぼすリスクを洗い出して包括的な検証を行った「食料の安定供給に関するリスク検証」の中で、水産物について労働力不足や燃油の輸入減少・価格高騰などを「重要なリスク」と特定されたことに触れた。
こうしたことも踏まえて、水産物や燃油などの資材の相当部分を海外に依存する日本について、「国際情勢を受けた水産物や漁業生産資材の輸入価格の高騰によって水産物の安定供給が脅かされるリスクを抱えており、ウクライナ侵攻でそれが顕在化した」と指摘、農産物と同様に水産物の食料安全保障の強化が急務となっていると強調している。
さらに海面水温や底水面の上昇といった海洋環境の変化がサンマやサケ等の減少の要因になっていると考えられることなどについて、水産庁の検討会で共有されたことに触れ、海洋環境の変化に対応する対策を検討するとともに、水産物の自給率向上に向けた必要な対策を講じることの必要だと指摘した。
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