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生産と消費をつなぐデジタル化も課題 農業DX構想の改訂へ 農水省2023年6月27日

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農林水産省は2021年3月に策定した「農業DX構想」の改訂を行うため6月23日に有識者検討会を開催した。今後、テーマ別に5回程度の検討会を開き年末に改訂に向けたとりまとめを行う。

労働力不足や高齢化のなかでも生産性を向上させ消費者のニーズに応じた農産物を持続的に生産、提供するために農水省は2021年3月に農業DX構想を策定した。

同構想のもと、気象情報や土壌状態、作業履歴を地図上で見える化して管理したり、さらに市況などのデータを活用した農業経営や、デジタル技術を活用した物流の効率化、行政事務のオンライン化などを推進したきた。
目標の1つが2025年までに農業の担い手のほぼすべてがデータを活用した農業を実践すること。実績は2020年で36.4%、21年で48.6%と増えている。

また、紙媒体で行っている行政手続きや補助金申請などのオンライン化も急務だとして農林水産省共通申請サービス(eMAFF)を21年から本格運用、23年3月までに3300を超える行政手続きのオンライン化を実現した。

一方、構想策定から2年が経過し、内外の情勢が大きく変化していることなどから改訂に向けた有識者検討会を開催することにした。座長には三輪泰史日本総研創発戦略センターエクスパート、座長代理には中谷朋昭東大農学生命科学研究科准教授が選任された。

構想を策定した2年前はコロナ禍のなかさまざまな分野でのデジタル化の遅れが浮き彫りになり、その取り組みが急がれたが、農水省は今回の論点として、コロナ禍から脱却しつつあるなかでどう見直していくか、また、DXの取り組みにばらつきがあるなか農業や食関連産業の関係者とどう連携を図っていくかなどを示した。

議論をふまえて年末に「農業DX構想2.0」をまとめる。

委員の意見交換では「DXの成功事例を1つでも作り、データを活用したことで何ができるようになったか、結果を指標に推進すべき」や、「課題はさまざまな情報の地図への集約。集約のためデータ入力ができなければ情報が共有されない」として人材の育成が課題とする指摘もあった。

また、安全で安心なおいしい食料を安定的に供給し、環境負荷を低減させることも求められている農業のためにどうDXを活用するかの視点が大事だとの意見も出た。エムスクエアラボの加藤百合子代表は「生産と消費が分断された社会をつなぐ」ことが必要で「DXはいかにバリューチェーンではなくバリューサイクルをつくるかでは」と提起した。

高知県農業振興部の岡林俊宏IoP推進監は資材価格の高騰の一方、農産物の販売単価は横ばいで「生産現場は本当に苦しい。DXで産地ががんばっていることを評価する仕組みづくりまでできれば」と提起した。とくに農業地帯では都市の卸売市場への出荷が不可欠だが、「そこは生産者と消費者が不在。ここを結べないか」という。

また、高知県では若手を中心に1000人を超える農業者が県のデータを利用しているが、一方でベテラン農家にもデータ利用の重要性を気づいてもらうことが必要で、そのためにはそれを伝える普及員やJAの営農指導員の育成が必要だとした。

アグベンチャーラボの荻野浩輝代表理事理事長は生産者が収益を上げるにはコストなどを価格に反映する必要があり、DX推進によって「消費者の意識改革、エシカル消費につなげることも課題」と指摘した。

次回は7月11日にスマート農業と流通DXをテーマに開く。

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