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忍び寄る食料危機 生産と消費の共助で農を守る2023年7月18日

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(一社)食料安全保障財団は7月15日、東京都内で特別講演会「今、ここにある危機~忍び寄る食糧危機から身を守れ!~」(後援:JA全農)を開き、理事長の鈴木宣弘東大教授らが農産物貿易自由化に始まる食と農の現在の危機を分析、それを乗り越えるため生産者と消費者が垣根をなくして協同し農林水産業を支えていくことが必要だと強調した。

講演会は東京・代々木のJA東京南新宿ビル会議室で開かれた。会場には約90人が参加、そのほかオンラインで約150人が参加した。講演会は東京・代々木のJA東京南新宿ビル会議室で開かれた。
会場には約90人が参加、そのほかオンラインで約150人が参加した。

戦う前に餓死する日本人

鈴木理事長は「日本で最初に飢えるのは東京」と題して講演した。

そのなかで肥料、飼料の海外依存に加え、種子を海外ほ場に依存していることを考えると食料自給率は10%程度しかないと指摘。コロナ禍による世界的な物流停止とウクライナ危機による生産資材の高騰で食料安全保障への国民の関心は高まり、国内農業生産の強化が必要になっていにも関わらず、現状は、米や牛乳は過剰だからと現場に減産を求め、基本法の見直しに向けた農水省検証部会の中間とりまとめでは食料自給率は「指標の1つ」として格下げされている。

さらに食料自給率の向上のための抜本的な議論よりも経済制裁や敵基地攻撃能力の強化を議論している現状を「戦う前に餓死してしまうことが分かっていないのか。当たり前のことをしっかりと主張していかなければならない」と鈴木理事長は強調し、自国の農業生産力の強化を含め、食料を基本にした外交戦略が必要だと話した。

食料自給率の低下は国民の食生活に変化が原因ではなく、戦後、米国の要請で余剰農産物の輸入に食料を頼るなど、貿易自由化のもとで国内農業の弱体化を招いたことや、欧米では農業所得の6~9割が国からの支援で支えられているが日本は3割程度という実態なのに、「農業は過保護」との誤解をメディアは広めてきたことなどを改めて指摘し、「それでも世界10位の農業生産額を達成している日本の農家はまさに精鋭であり希望の光」と強調した。

こうしたなか、適正な価格を実現し生産者と消費者のネットワークで支え合う「強い農業」に向け、各地で協同組合や共助組織づくりが重要になると参加者に呼びかけた。

世界の危機 救う農業者

ОKシードプロジェクトの印鑰智哉事務局長は「食料を取り巻く多重危機」と題して公演した。

印鑰氏は、規模拡大による単一品種生産という工業型農業が世界で主流になった結果、生物多様性や地域固有の食などを失っただけでなく、土壌崩壊による気候危機や、抗生物質多用による感染症危機など多重危機が同時進行していることを指摘した。

こうした過程のなかで命を育ててきた農業は姿を消し、工場の原料を提供するものへと変質した。しかも遺伝子組み換え農産物やゲノム編集食品の登場で、「食品のなかに多数の特許が埋め込まれ、特許料を払うものだけが食べることができるという新たな食料危機」に警鐘を鳴らし「みんなのものとしての食。食料主権を守ることが鍵」と話した。

一方、この危機を克服しようという世界の動きを印鑰氏は紹介。在来種を守る動きはブラジルや韓国、イタリアで法律や条例が制定され、米国でも法案が作られているという。

遺伝子組み換えのワタ導入で農家が大きな損害を被ったインドは有機農業者がもっとも多い国となり、世界の有機農業生産者は1999年から2019年までに15倍以上増えた。

栽培技術も進み、2種類以上の作物を混植するコンパニオンプランツ(共存作物)の方法で収量を確保している事例などを紹介した。また、米国で急速に増えているのが環境再生型農業(Regenerative Agriculture)であり、不耕起で緑肥を植えるなど土を覆い土壌消失を防ぐ。化学肥料も減らして増収ができ水不足も減少し、CО2も吸収する。

印鑰氏はこうした農業こそが「多重危機の解決者」であり、日本では学校給食で有機農産物を広げていこうとする消費者、生産者、自治体の連帯が期待されるといい、地域の種子を共有し、健康と環境を守る地域の取り組みを展開するなど「地方自治体から変えよう」と呼びかけた。

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