鳥インフル防疫体制は9月中に整備を 分割管理でリスク低減検討も 農水省が疫学調査報告書2023年7月26日
農水省は7月25日、過去最多の発生となった2022年~2023年シーズンの鳥インフルエンザの発生事例についてまとめた疫学調査報告書を公表した。昨シーズンは野鳥の感染が過去で最も早い9月に確認されるなど、感染時期が早まっているとして、今年は9月中には都道府県や農場が鳥インフルへの防疫体制を整備する必要があると提言、対策の前倒しを呼びかけている。
報告書によると、国内の鳥インフルエンザ発生は、家きんでは昨年10月28日から今年4月7日までに過去最多となる26道県で84事例に上り、野鳥等では昨年9月25日から今年4月20日までに28道県242事例でウイルスが確認された。防疫措置のための家きんの殺処分数は約1771万羽と過去最大規模となった。
農水省の疫学調査チームが発生農場などで原因究明のための調査を行った結果、発生農場では18種類のウイルスが確認された。侵入時期や経路については、農場近くの水域に飛来した感染した水鳥や、感染した水鳥を食べたカラス類が農場周辺や農場内への侵入リスクになった可能性が考えられるとしている。また、近隣農場間で伝播した可能性も否定できないとしている。
こうした状況を踏まえ、今後の発生予防やまん延防止対策の強化に向けて提言し、昨年9月には野鳥の感染が確認されたことから、渡り鳥の飛来が本格化する前の9月中には都道府県や農場での防疫体制を整備する必要があると指摘している。また、月別のピークは12月、次いで11月と1月に発生が多かったことから、特に11月から翌年1月までを重点対策期間として対策の徹底を図る必要があると強調している。
さらに疫学調査では家きん舎に立ち入る車両や器具の消毒、専用衣服・靴の着用などが行われていない事例などがみられたころから、衛生管理区域や家きん舎に立ち入るすべての作業従事者や外部事業者に衛生対策を徹底させることが重要だと指摘している。
また、発生農場は規模が大きい傾向が見られ、相対的にウイルスの侵入リスクが高くなる可能性があることを念頭に、飼養衛生管理を徹底することが重要だと強調するとともに、施設や飼養管理を完全に分けて農場を複数に分割し、感染拡大リスクを低減することも検討し得るものと考えられると記述している。
農水省動物衛生課は「各都道府県や農場に早めの対策を取っていただくために、例年より2か月近く早く疫学調査報告書をまとめた。昨シーズンは比較的管理の良い農場でも適切でない対応の事例が見られており、ウイルスの侵入防止などに向けてできることから取り組んでほしい」と話している。
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