食料自給率 カロリーベース0.37ポイント低下 生産額ベース 過去最低の58% 農水省2023年8月7日
農林水産省は8月7日、2022年度の食料自給率を公表した。カロリーベースの自給率は前年度と同じ38%となったが、小数点以下で比較するとわずかだが低下した。生産額ベースの自給率は5ポイント低下し過去最低の58%となった。
カロリーベースの食料自給率は37.64%で前年の38.01%(確定値)から0.37ポイント低下した。40%を下回るのは13年連続。
農水省によると小麦は作付け面積は3.3%増えたものの、豊作だった前年に比べ単収が▲12.4%となったことや、サバ類やカツオなど魚介類の生産量が減少した。その一方で原料の多くを輸入に頼る油脂類の消費が価格上昇の影響で減少、自給率のプラス要因となった。そのため整数では38%と前年と同水準となった。このうち米は輸入量が▲5.2%となり、自給率のプラス要因となった。
飼料自給率は25.7%から26.2%へとわずかだが上昇した。一方、鶏肉の輸入量が▲5.6%と減少したことなどで、畜産物のカロリーベース自給率は1%上昇し13%となった。
また、飼料自給率を反映しないカロリーベースの食料国産率は前年度と同じ47%となった。
生産額ベースの食料自給率は、輸入された食料の量は前年度と同程度だったが、ロシアによるウクライナ侵攻の影響による国際的な穀物価格や、飼料・肥料・燃油など生産資材の高騰、さらに円安なども背景に輸入額は増加、そのため食料の輸入額は1兆7400億円増えて7兆9407億円となり、生産額ベースの食料自給率は58%(58.03%)と過去最低となり、前年の63%(63.41%)から5ポイント低下した。飼料自給率を反映しない生産額ベースの食料国産率も前年より4ポイント低下し65%となった。
農水省によると国内生産額は米が1064億円増、野菜が977億円増など価格上昇で生産額が増えた品目もあるが、牛乳・乳製品は326億円減、牛肉296億円減など減少した品目もある。
また、生産額ベースの食料自給率の計算では、飼料輸入額や加工食品(油脂類、でん粉、砂糖類など)の原料輸入額を国内生産額から差し引くことになっている。このため飼料や原料の輸入額が増えると、生産額ベースの食料自給率は低下する。
今回は輸入飼料、輸入原料などが高騰し輸入額が増えたことが大きく影響したが、農林水産省によると円安も要因ではないかという。2021年度には1ドル112.4円だった為替が22年度は135.4円と20.5%上昇した。国際的な穀物相場は落ち着いているものの、円安の影響で高止まりが続いた。農水省は「為替の影響が大きいのではないか」とする。
食料自給力 低下続く
また、農水省は同日、食料自給力指標も公表した。これは国内生産のみでどれだけ食料を最大限生産することが可能か、わが国も食料の潜在生産能力を指標化したもの。不作付地も含めた農地と農業技術、労働力に着目して試算する。
その結果、2022年度は米・小麦中心の作付けでは、農地の減少、魚介類の生産量減少、小麦の単収減少などの要因で、前年度より26kcal/人・日少ない1720kcal/人・日となった。
推定エネルギー必要量(そのときの体重を保つために適当なエネルギー)は2168kcal/人・日とされており、米・麦中心の作付けではそのレベルを実現できない。
一方、カロリーの高いいも類中心の作付けでは2368kcal/人・日で推定エネルギー必要量を上回る。しかし、前年より53kcal/人・日下回っている。より労働力を必要とするいも類中心の作付けは労働力(延べ労働時間)が減り、減少傾向が続いている。農水省は食料自給力の維持向上のため、農地の確保、単収向上に加え、労働力の確保や省力化など技術改善が重要だとしている。
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