適正な農畜産物の価格形成 大きな課題 農政審検証部会2023年9月12日
9月11日に最終答申を行った食料・農業・農村基本政策審議会では、今後の基本理念の一つに掲げた農畜産物の適正な価格形成について「現場では実現への期待が高い」とする意見がある一方、コストをすべて価格に反映させることに慎重な意見もあり、大きな課題となることが示された。また、担い手についても改めて「多様な人が必要」と強調する意見も出された。
適正な価格形成について中家徹全中顧問は「地元でも期待が大きい。できるだけ早く仕組みを構築を」と求め、北海道で酪農経営をする椛木円佳マドリン代表取締役は農業で生活できず離農する人が多い実態を話し、適正な価格形成は「大きな課題」と強調した。
ただ、「適正な価格はどこか、慎重な議論が必要」(山波剛・山波農場代表取締役)との意見もあるほか、「自ら経営管理能力を向上させることで付加価値を付けたり、売り先を開拓するなど能動的に関与して買い手側とともに価格を決めるなど取り組みも必要」と堀切功明キッコーマン会長は指摘、柚木茂夫全国農業会議所相談役は「農業者の食品産業との連携が一層重要になる」と話した。大橋弘審議会会長は「適正な価格形成は悩ましい。消費者は安価を求める」と話し「価格にコストをフルに反映させていいのか」と指摘するとともに、売り手と買い手の力関係の問題も挙げた。
価格形成に限らず、国内農業への理解を広めていくため「農業と消費者の距離を縮め全体を透明化することで自分事として(食や農を)考えていくようになる」(宮島香澄日本テレビ解説委員)として国民の理解を進める必要性を挙げる意見も出た。
担い手について農産物流通に関わっている加藤百合子エムスクエア・ラボ代表取締役は「大規模集約化だけでは難しい」として環境負荷の低減と多様でおいしい日本の食を維持していくには「多様な人が必要で生産から消費までチーム化していくことが大事」と強調した。
そのほか農業の役割の発信を強めるべきとの意見もあった。加藤氏は「国民の健康を生み出しているのが農業」というメッセージを発信すべきだとし、阿蘇地域で農業を営む大津愛梨O2ファーム共同代表は農村地域に人が減り、農業生産が縮小することは「国防にも影響する」と強調した。そのほか次世代が魅力を感じる職業にしていく重要性も指摘され、外部からの人材の登用や経営基盤の強化で農業法人の賃金を上げる必要性も指摘された。
基本法がどう改正されるかも注目すべきだが、個別の政策、次期基本計画でどう具体化を図るかも重要になる。
(関連記事)
・基本法見直しへ最終答申 農政審議会(2023.9.11)
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