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インボイス制度開始迫る 影響未知数 現場JAの声を聞く2023年9月22日

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10月から消費税のインボイス(適格請求書)制度の運用開始をうけ、JAの対応に注目が集まっている。制度の運用開始を目前に、対応に追われるJAや直売所の現状を聞いた。

インボイス制度開始迫る 影響未知数 直面する現場の声

インボイス制度は、売り手が取引先(購入者)に正確な消費税率や税額を伝えるための制度だ。消費税はモノやサービスを売った時に受け取る消費税額から、仕入れ時に支払った税額を差し引いて納める(仕入れ税額控除)ので、税額控除にはインボイスの保存が必要となり、購入者はインボイスがないと税負担が増えることになる。

一方、売り手である農家は、年間売り上げが1000万円以下の場合、「免税事業者」として消費税の納税が免除されている。しかしインボイスを発行するには「課税事業者」となる必要があり、転換をすれば、消費税を納める必要がでてくる。転換の義務はないが、インボイスの発行を受けられない購入者は、免税事業者からの商品購入をやめたり、仕入れ価格の引き下げを要求するおそれがある。

直売所に出荷する小規模農家は免税事業者が多い。そうした農家は消費税納税を覚悟して課税事業者に転換するか、免税事業者を維持して取引条件悪化のリスクを負うかの判断を迫られることとなり、事態の打開にむけたJAの対応に注目が集まっている。

JA鹿児島きもつき管内の直売所「どっ菜市場」は、鹿児島県内随一の規模を誇り、取扱品目は3000種を超えるという。この中でインボイスを発行できる商品は、現時点で2割程度。「家庭菜園の延長にあるような小規模農家が多く、免税事業者がほとんどだからではないか」と担当者はいう。

利用客の約9割は一般家庭で利用する購入者で、インボイスを発行する必要がないため、制度運用開始以降も売り上げやインボイスにかかる事務処理増加の影響は少ないと見ているようだ。しかし、インボイス発行を求める仕入れ目的の大口顧客向けに、個別商品ごとにインボイス発行あり、なしを判別できる商品ラベルを用意し、張り替えのタイミングを見計らっているという。

管内に10店の直売所を抱えるJAぎふでも、インボイス発行を求める仕入れ目的の大口顧客向けに、商品ごとの値札ラベルでインボイス発行あり、なしを判別できるようにしている。このラベルに星印がついている場合は、「インボイス発行なし」、無印のものは「インボイス発行あり」とした。ラベルの張り替えは9月初旬から行っており、準備は着々と進んでいる。これまでもインボイス制度の勉強会などの開催は、事業者のほうから促されて開催したこともあるなど、「事業者は感度が高く、運用開始にむけた準備が整っている模様」と話す。

しかし各直売所の出荷農家約2000人のうち、インボイス登録をしているのは8月末時点で約50人。全体の2.5%にとどまるという。ほとんどが小規模農家の免税事業者であることが要因とみており、インボイスの相談窓口も直前の駆け込み相談が増加する傾向もなく、横ばいという。そうした中でも「相談があった場合は、個別の事情を踏まえて対応を提案したい」と話す。

直売所は、出荷農家の委託を受けて販売し、手数料を受け取る「委託販売方式」がほとんどであり、直売所で売れた商品のインボイスを、直売所が出荷農家に代わって発行できる特例「媒介者特例方式」が採用できる。ただし発行できるのは、事前に登録した課税業者の農家の商品のみとなる。未登録の免税事業者の商品には適用されないため、インボイスを求める仕入れ業者からは敬遠されることが見込まれている。

どちらの直売所も数は少ないものの、インボイス発行を求める仕入れ目的の大口顧客からは、インボイス未登録の商品の購入を控える動きがでるだろう、と話す。

そうした事態をさけるため、直売所が商品をいったん買い取ってから販売する「消化仕入方式」を採用すれば、インボイス発行を直売所が一手に引き受け、免税事業者の商品の買い控えを抑えることができると見ている。

JAぎふ担当者は「今後、売り上げの落ち込みや、インボイスにかかる事務処理が増えるのであれば、大口顧客に対しては買い取り方式(消化仕入方式)に変更することも視野に入れたい」と話す一方、「実際は10月を迎えてみないと分からない」と、今の段階では影響が計れないとした。

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