不測時の食料増産 麦・大豆などで対象生産者に政府が「要請」 農水省2023年10月4日
農林水産省は10月2日、「不測時における食料安全保障に関する検討会」の第3回会合に食料供給の確保策の考え方を示した。そのなかで備蓄の活用や輸入によっても必要な供給量を確保することができないとき、生産の拡大を生産者に要請する仕組みを検討すべきとの考えを示した。
現在の「緊急事態食料安全保障指針」では、平時から民間の在庫量や生産能力を把握するなど情報収集をしつつ、不測の事態のおそれがある場合には早い段階から備蓄の放出や、出荷調整、輸入促進などで対応し、それでも事態が長期化し深刻になった場合には国内での増産で対応するとしている。
今回示したのは、こうした事態に国はどう対応すべきか、についての考え方。それによると、供給量が減少するおそれのある段階から、出荷や輸入、生産について民間事業者に取り組みを促す「要請」を基本とする。深刻な事態であっても可能な限り民間の自主的な取り組みをベースとする。
要請に基づいて事業者が出荷・輸入・生産の計画を作成し提出する。
さらに提出された計画では十分な供給量が確保できないと判断した場合は、計画の変更を国が「指示」する。
しかし、「指示」されたからといっても、とくに生産の拡大については、資金や土地、生産資材と施設、機械と労働力など生産条件が整うことが必要だ。また、増産の結果、需給が過度に緩み価格が下落し、農業経営に打撃を与えるリスクが懸念されるほか、特定の品目の生産を拡大した結果、他の品目の供給不足を招くおそれもある。
農水省が示した考え方では、「要請」や「指示」が有効な結果につながるためには、「国として障害を取り除き、その活動を支援する必要があるのではないか」との考えを示している。
そのうえで品目ごと国内生産の特徴が異なっているため、国による生産拡大の要請が必要と考えられる品目とそうでない品目があるとした。
たとえば、米は生産ポテンシャルが高いが、平時は生産を抑制しているため需要が増えれば生産は増加すると見込み、生産拡大を要請する必要性はないとした。ただし、米が増えれば作付け転換で生産していた麦・大豆は減ることに留意する必要がある。
そのため麦・大豆は生産拡大を生産者に要請する必要がある品目とし、対象者は小麦・大豆の生産者だけでなく米の生産者も含める考えを示した。
そのほか要請が必要な品目として飼養期間の延長によって一定程度増産できる鶏卵、搾乳回数や期間の延長で増産が可能な牛乳・乳製品と、砂糖を挙げた。
また、増産要請をする対象者は、麦、大豆であれば畑作物の直接支払交付金や鶏卵生産者経営安定対策などの交付対象者といった平時に対象品目を生産している生産者とし、そのほか畜産物を除き耕種品目では、過去に麦、大豆などを生産していた生産者、あるいはその生産能力があると認められる生産者には「増産の要請等を行うことも可能とすべきではないか」との考え方を示した。
そのほか、備蓄については民間備蓄・在庫を国が平時や不測時に調査できるように法的整備が必要との考えを示したほか、消費者対策として買いだめ等を抑える働きかけとともに、販売量制限の要請を販売事業者に働きかけることも行うべきではないかとしている。
この検討会は、食料安保の不測時に国が対応するために法制度を整備するため、考え方や必要な事項を検討するために設置され、年内に検討結果のとりまとめを行う予定となっている。
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