どうなっているの、東電の海洋放出 いわき市で学習会2023年11月27日
東京電力は11月20日、福島第一原発汚染水(東電は処理水と言っている)の3回目の海洋放出を完了した。この海洋放出は、風評被害を懸念する漁業者の反対を押し切る形で8月24日に始まった。東電は、周辺海域のモニタリングで異常はなかったと発表している。
漁業者や周辺地域の住民の反対、心配の声を受け、福島県いわき市の市民団体「これ以上海を汚すな!市民会議」は、11月23日、いわき市のLATOV(ラトブ)で「どうなっているの、海洋放出」学習会を開いた。
福島県いわき市で開かれた学習会
この学習会では、環境保護団体・FoE Japanの満田夏花さん、地元小名浜の漁民・野崎哲さんらの報告と、県内外からのリレートーク、参加者との意見交換が行われた。ここでは、満田さんと、地質学を専門とする福島大学の柴崎直明さんの報告を中心にレポートする。
満田さんは、多核種除去装置(ALPS)処理汚染水の論点として、何がどれだけ放出されるのか、代替案の検討、膨れ上がる海洋放出のコスト、海洋放出は廃炉のために行われるのか、汚染水をこれ以上生み出さない対策などを挙げ、問題だらけで、海洋放出は直ちに止めるべきだと力を込めた。
「国と東電は2018年当時、海洋放出の費用は17~34億円、期間は52~88か月と言っていたが、現段階で1200億円、期間は30年。それがもっと増え、期間も延びると予想される。当初検討されていた大型タンク貯蔵案やモルタル固化案の方が安く済む。東電は廃炉のためにと言っているが、事故を起こした原発からデブリ(溶け落ちた燃料)を本当に取り出せるのか、取り出したデブリをどう処理するのか、どこへ持って行くのかなどはまだ決まっていない」。
「ALPS処理水には、除去できないトリチウムの他にも、ヨウ素129、ストロンチウム90などが基準を超え、残留している。放出される放射性物質の総量も示されていない」。
柴崎教授は、「東電の地下水対策は失敗している。凍土壁を作ったが、効果はない。地下水のことを調べず、机上のプランだけで進めてきたからだ。現在でも止水対策を講じていない。9月には大雨が降り、1日に230?もの水が流入した。このままだと30年で処理は終わらない」と述べ、止水対策として「10年単位では、サブドレン(井戸)の増強による地下水管理、長期対策としては、凍土壁の外側に広域遮水壁を建設し、敷地内への地下水流入を止める。さらに集水井と水抜きボーリングを設置することで、地下水位を下げることができる」と提案した。
野崎さんは、2015年に国、東電が福島県漁連と交わした「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という文書のいきさつや、3.11後の福島の漁業の動き、対応などを話し、今でも海洋放出には反対だと語った。
リレートークでは、いわき市湯本温泉の旅館経営者で原子力考証館館長の里見喜生さんが、「海洋放出後、8割がキャンセルになった、市民から声なき声を発信し、多くの人に伝えていくことが大事」と窮状を訴えていた。また、武藤類子さんは、原子力規制委員会と東電を相手に、ALPS処理汚染水海洋放出認可の取消しと、海洋放出の差止め訴訟を起こしていると報告した。
(本紙客員編集委員 先﨑千尋)
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