酪農 需給調整に不公平感 畜産 生産基盤強化が課題 全中 30日に代表者大会2023年11月28日
畜産・酪農は飼料価格をはじめとして生産資材価格が高騰し高止まりするなか、牛枝肉価格や子牛価格の下落、生乳需給の緩和なども重なり、生産基盤の弱体化が懸念されている。こうしたなか2024年度の畜産・酪農の政策価格決定に向け、農水省の審議会畜産部会は11月22日に会合を開き議論を始めた。また、JAグループは11月30日に東京都内で全国代表者集会を開く。
11月22日に開かれた畜産部会
22日の畜産部会で委員の小椋茂敏JA北海道中央会副会長は北海道酪農の現状を話した。
それによると道内4130戸の酪農家収支見通しは650万円程度のプラスになりそうだが、年末にかけての借入金の返済や乳牛などの償却費を差し引くと平均で900万円近いマイナスとなり、「それをセーフティネット資金の借り入れしながら埋めている状況だ」と実情を話した。
対策として求めたのは、加工原料乳生産者補給金制度のうち、集送乳調製金単価(23年度は2.65円/kg)。すでに輸送業者から価格改定の申し出があるなど、2024年物流問題が迫るなか、酪農経営と物流の状況をふまえて単価を検討するよう求めた。
また、生乳需給調整対策ではチーズの生産拡大への支援強化をもとめた。また、改正畜産経営安定法によって生乳の出荷先に選択肢ができたことで需給調整の取り組みに多くの酪農家は不公平感を持っているとして国が需給調整に責任を持つなど「不平等のない法律にしてほしい」と主張した。
JA全中の馬場利彦専務は「再生産に配慮した適正な価格形成」が課題だと主張した。現在、適正な価格形成の仕組みづくりに向け、畜産物では飲用牛乳を対象に検討を行っているが馬場専務は「フードバリューチェーン全体の持続可能性のためにも、政府主導で議論を進め制度の早期実現を」と求めた。
また、集送乳調整金については物流問題を踏まえた単価はもちろん、需給調整のためにも交付対象数量(23年度は330万t)を十分に確保するよう求めた。
需給対策では、生産抑制に取り組む酪農家はそれ以外の酪農家に対して不公平感を持ち「全国的な課題になっている」と強調、「国の強いリーダーシップで系統外も含めた関係者の十分な議論」が必要だと主張した。
そのほか和牛の消費減退で肥育農家の経営が悪化、将来への不安から子牛価格が下落し、黒毛和種では今年5月に2001年のBSE発生以来21年ぶりに保証基準価格を割るほど下がった。
そのため肉用子牛生産者補給金制度の保証基準価格については「再生産が確実にできる水準」で決定するよう求めた。
畜産部会では小売業の委員から牛肉の消費回復がもっとも遅く、消費者も和牛には手を出さなくなっている現状が指摘され値下げして販売している実態もあるという。一方、学識者委員からは、A5等級が半分以上を占めるなか、A4、A3等級の価格が上昇しているとして、高級品ばかりではなく「多様な和牛肉」の販売も指摘もあった。
酪農家からは生産抑制に取り組むなか、今年は猛暑で搾乳量が減り、経営と生活を維持するために「資金を借りて何とか営農してきた」との実態や「見通しが立たないことがつらい」との声が聞かれた。
畜産部会は12月中旬の会合で政策価格などを大臣から諮問し決定する。
重要な記事
最新の記事
-
(425)世界の農業をめぐる大変化(過去60年)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月7日
-
多収米の契約栽培で供給増へ 主食用米全体の安定供給にも寄与 JA全農2025年3月6日
-
貯金保険機構の保険料引き下げへ 有識者検討会に案を提示2025年3月6日
-
春の大玉スイカ出荷本格化 JA鹿本2025年3月6日
-
日本海側中心の大雪被害に早期の支払い JA共済連2025年3月6日
-
ニデック京都タワーに「北山杉」の木製品を寄贈 京都府森林組合連合会と農林中金大阪支店2025年3月6日
-
【人事異動】JA共済連(4月1日付)2025年3月6日
-
次世代の環境配慮型施設園芸の確立へ Carbon Xtract、九州電力、双日九州と実証事業開始 農研機構2025年3月6日
-
バイオスティミュラント新製品「ヒートインパクト」発売決定 ファイトクローム2025年3月6日
-
鳥インフル 米ワイオミング州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年3月6日
-
食用油の紙パックのリサイクルシステム構築 資源ごみとして静岡県裾野市で行政回収開始2025年3月6日
-
食品産業の複合展「FOOD展2025」10月開催 出展申込受付中2025年3月6日
-
果樹の新しい有機リン系殺虫剤「ダイアジノンMC」普及性試験を開始 日本化薬2025年3月6日
-
「オーガニック天平マルシェ」奈良・天平広場で開催 コープ自然派奈良2025年3月6日
-
野菜の機能性・健康効果に特化『野菜健康指導士』資格事業開始2025年3月6日
-
農林水産業専門の人材サービス「農業ジョブ」新機能リリース シンクロ・フード2025年3月6日
-
農薬がどの程度残りうるか 地理的・気候的条件から予測 岐阜大学2025年3月6日
-
農業に特化した就転職オンラインイベント「就農会議」参加者募集 あぐりーん2025年3月6日
-
乳酸菌発酵の力で肉を変える「乳酸菌発酵液」食肉事業者へ販売開始 明治2025年3月6日
-
日本生協連「くらしと生協」春アイテム「sweetweb.jp」で華やかに登場2025年3月6日