生産現場の危機的状況 川下との共有を 適正な価格形成協議会 農水省2023年12月28日
農林水産省は12月27日、適正な価格形成に関する協議会の第3回会合を開いた。2つのワークキンググループのこれまでの協議を踏まえ、価格形成の仕組みづくりの必要性やそのためのコストデータの収集方法などで意見を交換した。生産サイドからは酪農で離農が続くなど危機的な状況が川下も共有し、価格形成の仕組みを考える必要があると強調した。
同協議会では協議会の下に飲用牛乳WGと豆腐・納豆WGを設置し、これまで2回の会合で現状の評価や価格を形成するためのコストデータの収集・調査などの課題を議論してきた。
現状について酪農生産サイドからは、飼料価格高騰などのコスト増が乳価に十分反映されておらず、経営継続できない酪農は廃業するなど危機的な状況が示された。また、乳業メーカーからは卸・小売との取引は「赤字の状況」との認識が示された。
豆腐・納豆メーカーからは利益が上がらず再投資ができない企業が多く、将来的な事業継続は疑問だとの危機感が示された。
この日の協議会ではこうしたWGでの意見を踏まえ意見交換したが、改めてコストが価格に転嫁されず生産・製造段階の事業継続が困難になっているが、その危機的状況が川下に伝わっておらず、これを共有することが仕組みづくりに必要なことが指摘された。また、そのためにもコストデータを収集して適切に発信し評価することが大事などの意見が示された。
農水省は価格にコストを適正に反映させるには、各段階のコストを示すことができなければ消費者の理解は得られないとして、統計調査等を活用した「コスト指標」を作成し、これを活用した価格形成の仕組みを想定する。
そのためコストデータの収集が必要だが、業界の一部からはコスト提示はできないと考えもある。そこで農水省はコストデータについて、生産段階では、生産者団体が独自データを提供することを協議することは可能との考えが示されたことから▽公的データ以外のデータも活用した指標の作成を例示。
製造段階では、▽個社情報の公表が困難なことから団体での取りまとめ方式での収集、小売段階では▽商品ごとのデータ整理にこだわらず、電気・光熱費、人件費、物流費のコストを捉えるなどのたたき台を示した。
また、コストの「指標化」について一律平均か、事業規模別などでグループ化するかといった指標のあり方も論点になるとした。
こうした調査を通じてコスト指標ができた場合、価格交渉における具体的な活用方法として農水省は、▽コスト指標の一定の変動が生じたタイミングに合わせてコスト指標に連動するかたちで価格を改定する(自動改定方式)、▽変動が生じたタイミングに合わせてコスト指標を参考として価格を改定する方式(改定方式)、▽変動が生じたタイミングに合わせて価格改定について再交渉する(交渉テーブルに着く)(再交渉方式)を示した。
会合では「再交渉方式」が「望ましい」、「現実的だ」との意見が複数出されたが、「自動改定方式」に肯定的な声は少なかったという。
農水省は「再交渉方式」について、これまではコストが上昇してもそもそも交渉に応じてもらえなかったり、交渉までに時間がかかったりした現状を改善することになるのではないかとしているが、コストデータの収集法も含めて、まだ方向性が見えてきたわけでなく、年明け以降も議論を進める。
今年6月の基本法検証部会の中間とりまとめを受けた今後の政策の展開方向では適正な価格形成の仕組みづくりについては「法制化をめざす」とされたが、27日に改訂された今後の展開方向では「検討を継続」とした。会合では危機的状況が川下に伝わっていないことが強調されたが、農水省は「(関係者が)協調して協議していくしかない。農産物は安くて当たり前という風潮でいいのか。市場が価格は決まるが、コストをどう考えてきたのか。適正な「価格形成」を議論していきたい」と話す。
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