農作業事故死亡者22年 238人 前年同水準 「今後3年で半減」新たな目標に 農水省2024年2月26日
農林水産省は2月22日、2022年の農作業事故の死亡者数を公表するとともに、農作業安全対策全国推進会議を開き、24年度の農作業安全対策の推進方針を示した。そのなかで新たな目標を設定するとともに、安全研修の強化と熱中症対策を重点として取り組むことを示した。
2022年の農作業事故での死亡者数は238人で前年より4人減ったものの、ほぼ同水準となった。
死亡者数は2013年から2017年は年間300人を越えており、現在はそれよりも減少しているが、就業者10万人当たりの死亡事故者数は11.1人と前年の10.5人からさらに増加傾向にある。死亡者数は減ったものの、事故率は決して減っておらず、他産業にくらべて高い状態が続いている。
年齢別にみると65歳以上の高齢者の割合が86%と極めて高い水準で推移している。
死亡事故を要因別にみると「農業機械作業に係る事故」が152人で全体の63.9%を占める。農業機械作業での死亡要因は「機械の転落・転倒」が72人(機械事故の47.4%)と約半数を占めている。
農水省は2020年に農作業安全確認運動の目標として農業機械作業での死亡事故を2022年までに2017年比で半減する(211人→105人)目標を掲げた。しかし、22年の死亡者数は152人となり、減少傾向にはあるものの目標は達成できず、就業者10万人当たりの死亡事故者数が増加傾向にあることから、2026年までの今後の3年間で直近の件数から半減(238人→119人)させる新たな目標を設定した。
そのための取り組みとしてこれまで「農繁期の注意喚起」、いわゆる「声かけ」に重点を置いて安全対策を推進してきたが、目標が達成できなかったことから農業者への研修を重視する運動に転換する。
農水省によると2017年から22年の都道府県の農作業事故死亡者の減少人数は平均1.4人だった。しかし、研修を実施した人数が100人から500人だった県は平均1.1人と少なく、逆に研修実施人数が2000人以上の県では平均2.6人と減少数が増えていることが分かった。
このため目標達成には農作業安全に関する研修の実施強化を推進する。
また、機械・施設以外の事故要因では「熱中症」が29人でもっとも多く全体の12.2%となっており、熱中症が事故要因に占める割合も高まっている。昨年夏のような猛暑が今後も考えられることや、建設業など他産業に比べて農業は1人で作業をすることが多く、体調異変に気づくことが遅れるというリスクも高い。
こうしたことをふまえ2024年度の農作業安全対策の推進方針として重点テーマを「学ぼう! 正しい安全知識~機械作業の安全対策と熱中症の予防策」として推進する。推進目標としてすべての都道府県において研修実施回数を23年度よりも増加させることを掲げる。
強化期間では「農作業安全に関する指導者」が中心となって研修や講習を行い、5月1日から7月31日までの3か月間を「熱中症対策研修実施強化期間」とする。暑さが本格化する前から研修を実施し対策の徹底を図る。研修はすべての農業者を対象にし実施し、単独研修だけでなく、各研修に熱中症に関する研修を追加することも推進する。
「農作業安全研修実施強化期間」は12月1日から来年2月28日までの3か月間。農業者が受講しやすい農閑期を強化期間として設定し、最大の事故要因である農業機械事故の安全知識の向上をテーマに農水省作成のコンテンツを使用した基礎研修と、必要に応じて農機の操作方法についての実践研修も指導者を活用して実施する。
「農作業の安全に関する指導者」は、行政やJA、農機メーカー、販売店などの職員など約5300人育成されている。しかし、地域で実施されている研修の約55%しか活動できていない。そのため農水省は指導者の育成と活動の推進にも力を入れ、指導者育成研修の実施回数を増やすなど取り組みも進める。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日