農地確保と経営基盤強化へ法改正 地域計画が重要 農水省2024年3月21日
食料・農業・農村基本法の改正案とともに政府は2月27日に農振法や農業経営基盤強化法などの改正案を決定し国会に提出している。法人経営体の経営基盤の強化を図るため地域計画に位置づけられることを前提に食品事業者などの出資も認める改正も行う案となっている。
農地目標で協議の場
農水省は食料安全保障強化に向けた「農地制度見直しの基本的考え方」のなかで、▽食料安保の根幹は人と農地の確保、▽農地は食料生産の基盤、農地の総量確保と適正利用のための措置を強化、▽人と農地の受け皿となる農地所有適格法人の経営基盤強化を打ち出し、関連法の改正案をまとめた。
そのうえで農振法(農業振興地域の整備に関する法律)の改正では、同法の目的規定に食料の安定供給の確保と、そのために必要な農地を確保することや、国と地方自治空体がそれぞれ農用地の確保に努めなければならないことを明記する。
国は毎年、都道府県に対して確保すべき農地面積目標の達成状況について資料提出を求め達成状況を公表する。現行法では目標確保に支障が生じているときは国が是正を要求するが、改正では目標面積の設定についての国と都道府県が協議する場を設置するとともに、必要な場合は国が勧告する仕組みも措置する。
農地転用については、不適切な転用を防止するため、営農型太陽光発電の導入など農地転用の許可を受ける者が適切に営農が行われていることを定期報告するよう農地法に規定を設ける。
一方、農地の権利取得については、許可要件として農作業に従事する者の配置の状況や、農業関係法令を遵守しているかどうかなど、耕作者の属性を確認する。また、農地所有適格法人については、拒否権付き株式を発行している場合は、その種類と株主総会でも農業関係者が議決権の過半を占めるべきことを明確化にする。
出資に特例措置
農業経営基盤強化法の改正では、農地所有適格法人が取引先の食品事業者などから出資を受けて両者で議決権の過半を占める特例措置を設ける。
申請できるのは認定農業者として5年以上の実績があり、「地域計画」に位置づけられた法人であること、また、農地の権利移転、転用、取締役の解選任の決定について株主総会で特別議決(3分の2以上)とすることを定款で定める必要がある。
この特例措置「農業経営発展計画制度」では、農業者と食品事業者を合わせた出資比率が過半となり、また、農業者の出資比率は3分の1以上とする。現行では農業者だけで過半を出資しなければならないが、この特例措置で「農業者の負担を増やすことなく経営基盤を強化できる」と農水省は話す。
一方、農地の権利移動や取締役の解選任について3分の2以上の議決権を必要とする措置によって、企業による買収などについて「拒否権が持てる」とする。
また、特例措置の認定を受けた法人は農業経営発展計画の内容を変更するときは、国がその都度確認し、認定を受ける必要がある。
また、JAグループと日本政策金融公庫の共同出資で設立されたアグリビジネス投資育成について、同社からの出資を一層活用しやすくするため、同社の出資割合の上限(総議決権の50%以下)を見直す。
ただ、農村現場の懸念もふまえ、地域計画に位置づけら一定の実績を持つ認定農業者に限定することや、国が法人の計画を確認すること、農地転用を制限することなど条件を整備する。
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