基本法改正案審議スタート 岸田首相 適正な価格形成 法制化視野に検討2024年3月27日
食料・農業・農村基本法改正法案の審議が3月26日の衆議院本会議でスタートした。改正法案は今国会で「重要広範議案」と位置づけられ、本会議では岸田文雄首相が出席し質問に答弁した。
首相は食料安全保障のリスクが高まるなか「平時から食料安全保障の確保が必要だ」として改正基本法案では基本理念に食料安全保障の確保を位置づけていることを強調した。
そのうえで「持続可能な供給が行われるよう人件費や内外の資材費など恒常的なコストが考慮される必要がある」として「適正な価格形成の仕組みについて法制化も視野に検討していく」と述べた。
改正法案成立後は基本計画で施策を具体化、「的確な制度や予算を確保し農政の再構築を図る」と必要な予算確保に言及した。
また、消費者が適正な価格の国産農産物を購入するためには、物価上昇を上回る賃上げが必要だとする自民党の江藤拓議員の質問に対しては「政府としても食料供給に関わる産業も含めて賃上げと成長の好循環が実現できるよう労務費転嫁、(優遇)税制の拡充などで強力に後押しする」と答えた。
一方、野党は直接支払いの必要性を訴え、立憲民主党の神谷裕議員は戸別所得補償政策や食料安全保障支払いなどの導入についての質問した。
これに対して首相は「過去の戸別所得補償制度は農地の集積集約が進まず生産性の向上が阻害される恐れがあるほか、消費が減少している品目の生産が継続され需給バランスが崩れる。補償を織り込み生産者の取引価格が低く抑えられる懸念もある」と指摘。改正基本法では「生産性向上や付加価値向上を後押しし、適正な価格形成を基本に収入保険など経営安定対策で所得向上を図っていく」と答弁した。
また、食料安全保障支払いについては、すでに多面的機能支払いや中山間地域直接支払いを講じていると答えるにとどまった。
「多様な経営体」については「規模の大小や経営形態に関わらず、引き続き農業で生計を立て効率的かつ安定的な経営の担い手として、経営安定と発展を後押しする」と、これまでの担い手の位置づけを強調した。担い手以外の農業者については、生産基盤である農地の確保を図っていくため「地域の共同活動への支援を行う」とした。
野党からは食料供給事態困難法案について農業者への生産拡大を求め実現できなかった場合に罰則があることへの批判も出た。これについて首相は食料供給に支障が生じた場合に「政府として確保可能な供給量を把握し実効性ある対策を行うため事業者に計画の届け出を求めている」と法案を説明。計画の届け出がない場合に20万円以下の罰金が規定されているが「計画通りに生産しないことへのペナルティーではなく、必要最小限の措置として計画の届け出を担保するため。理解いただきたい」と強調した。
学校給食に地場農産物や有機農産物を使用することには「食育の観点から有意義。体制づくりの支援を進めていく」と答弁。給食無償化については全国ベースの実態調査の結果公表を6月までに行うことにしているとして地域による学校給食の違いや法制度面での課題を整理して「結論を出す」ことを明らかにした。
日本共産党の田村貴昭議員は基本計画に盛り込む自給率目標などを質問、首相は「食料安全保障の観点から重要。ただ、生産資材の安定供給など自給率では評価できない課題もある。その他の事項も位置づけたが自給率の重要性が変わるものではない」と話した。
ミニマム・アクセス米の財政負担が売買差損などで拡大していることについては、新たな仕向け先の開拓や管理経費を削減し、国産米に影響を与えないよう国家貿易で管理している「この枠組みを維持する」と述べた。
農村活性化については人口減少のなかでも「地域社会の維持」を基本理念に位置づけており、農地の保全など共同活動や、観光など地域資源を活用した事業の創出など「関係人口の増加」で活性化を図る必要があるなどと述べた。
国民民主党の長友慎治議員は地産地消の重要性を指摘。岸田首相は「持続的な食料供給と消費に資する。地域の所得にもつながる」として直売所などの整備支援のほか、地域ぐるみで有機農業の生産・消費に取り組むオーガニックビレッジの取り組みについては「販路確保など後押しする」などと述べた。
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