価格形成に「コスト指標」 必要性に合意 適正な価格形成に関する協議会2024年4月8日
適正な価格形成に関する協議会の第4回会合が4月5日に開かれ、これまでの議論を整理し今後の検討方向を議論した。
国会で審議が始まった基本法改正案では、第2条の第5項で「食料の合理的な価格の形成」について規定している。現行基本法と同じく「需給と品質評価が適切に反映され」としており、農水省は価格形成は「需給と品質が基本」との考えは変わらないとする。
ただし、今回の改正案では、食料が持続的に供給されるためには、農業者や食品事業者、消費者までを含めた「食料システムの関係者」で「持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならない」と新たに規定されている。
需給と品質が価格形成の基本ではあるものの、関係者が納得した費用(=合理的な費用)が価格に反映されるような仕組みを検討するという施策の方向をこの条文は規定している。
第4回会合では基本法改正案のこうした条文をもとに協議会の役割を改めて整理、今後も価格形成の仕組みづくりについて検討をしていくことで合意した。
そのために品目ごとに各段階の取引価格やコスト構造について実態調査を実施する。対象品目は米、大豆、小麦、野菜(ピーマン、大玉トマト、キャベツ等)、果実(みかん、りんご等)、茶、飲用牛乳、鶏卵、食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)、加工食品が挙がっている。
生産者段階の調査は、生産費統計が実施されていない品目(野菜、果実、鶏卵など)が対象で、雇用費、種苗費、肥料費、光熱動力費など経費を調査する。米は流通段階を調査することになる。農水省によるとコスト調査はこの夏に向けて実施し結果を取りまとめ、調査結果を明らかにしていく。基本法改正案では第23条でコストが価格形成に反映されるよう理解を増進する必要性と、「合理的な費用の明確化の促進」を規定しており、調査結果を公表するのはこの規定に即すものでもある。
一方、コストの実態調査とは別に「コスト指標」の作成し、それを活用した価格形成を行っていくことに合意した。何を価格形成のためのコスト指標とするかや作成主体、価格交渉での活用法などは今後検討していく。とくに何をコスト指標としていくか、関係者が納得する指標をつくることができるのか課題となりそうだ。
昨年末の協議会では「何らかの指標を示し、『危機的な状況なのにあんなに安く売っている、ということを消費者に理解してもらい、酪農家を救うために他所で買おうという』という発想に導くことが可能であれば検討を」などの意見も出ている。
コスト指標の検討とともに、価格形成の仕組みも並行して検討する。春闘での賃上げをふまえ、岸田首相は3月末に「今年、物価上昇を上回る所得を実現する」と発言しており、農水省も政府全体の取り組みと一致させるように価格形成の仕組みを検討し、検討に当たっては適正な価格転嫁を新たな商習慣としてサプライチェーン全体で定着させることをめざす。
さらにこれまでの協議をふまえ採算を度外視した価格設定の継続や、コストに関わらず消費への影響から納入価格が低く抑えられる事例や、コストが上がっても価格交渉を機動的に行うことができないなどの実情を考慮するとしている。
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