政府備蓄米 放出は「慎重に考えるべき」 坂本農相2024年8月27日
坂本哲志農相は8月27日の閣議後会見で前日に大阪府の吉村洋文知事が政府備蓄米の放出を農水省に要望したことに対して「よほどのことがない限りさまざまな流通関係に影響を与える恐れがある。そこは慎重に考えなければならない」と放出に否定的な考えを示した。
大阪府の緊急抽出調査によると約8割の小売店で品切れが発生しており、坂本農相に対して吉村知事は26日の要望書で「すでに需給ひっ迫といえる状況」だと指摘し、「府民からも何軒もの小売店を探しても米が手に入らないという切実な声が連日寄せられている」と訴えた。
そのうえで新米の本格流通に時間がかかり、現在の状況が放置されることは看過できないとして、政府備蓄米を小売店等に早期に流通させることを求めた。
これに対して坂本農相は「民間流通が基本の米の需給や価格へ影響を与えるおそれがあるため慎重に考えるべき」と備蓄米の放出に否定的な考えを示した。
政府備蓄米の適正水準は100万tとされている。この水準について農水省は10年に一度の不作(作況92)や通常の不作(作況94)が2年連続しても国産米で対処できる水準としており、今年6月末では91万tとなっている。
毎年20万t程度を年初から実施される播種前契約で入札する。買い入れた後は5年間保管、その後、飼料用等の非主食用として販売する。政府による買入・売り渡しが市場に影響を与えないよう主食用に販売しない棚上げ備蓄方式をとっている。
現在の棚上げ備蓄方式となったのは2011年からで、それ以前は1年保管し主食用に供給し、新たに備蓄米を買い入れる回転備蓄方式だった。2003年に作況指数が90で米不足となり価格が高騰した時には、政府米の継続的な販売が行われ、それを卸業者がブレンド米として供給し価格が落ち着いた。
しかし、回転備蓄方式では、政府買入量が産地の生産量に影響を与えたり、政府販売量が米価に影響を与えるなどのことから、戸別所得補償制度を導入した民主党政権で現在の棚上げ備蓄方式に転換した。
ただ、政府備蓄米を主食用として放出しないわけではなく、大凶作や不作が連続するなど民間在庫が著しく低下するなどの場合は、農水省の食農審議会食糧部会で検討する。2011年に東日本大震災を受けて食糧部会で備蓄運営について議論されたまとめによると、米の安定供給に支障が起きる可能性がある場合に緊急調査を行い、備蓄米の放出がなければ翌年6月末の民間在庫量が相当下回る可能性があれば食糧部会を開催する。その議論を経て備蓄米の放出等を農相が決定するとされている。
坂本農相は会見で「よほどのことがない限り、さまざまな流通関係に影響を与えるおそれがあるので慎重に考えなければならない」との考えを示した。背景には6月末の在庫が156万tと過去最低水準となったが、需要に対する在庫率は22%で2011年、12年と同水準で「需給はひっ迫していない」という認識がある。ただ、8月には南海トラフ地震対応で買い込み需要があったことや夏期休暇による輸送の遅れが影響して店舗での品薄を招いたと説明する。
一方、新米は通常より刈り取りが早い地域もあり、出荷も前倒しをしているとして、坂本農相は「いつごろとは断言できないが不足感はだんだん減少していくと思っている」と述べた。新米の出回りについて農水省は20日過ぎから本格化するとの見方を示していたが、月末を迎えても店頭に並んではいない。「不足感」ではなく明らかに「不足」だと感じている人々は多く、「必要な量だけ買い求め、落ち着いた行動を」との農相の呼びかけは実感とはほど遠いのではないか。
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