合理的な価格形成 実効性に国の関与を 基本計画 議論本格化2024年10月3日
来年3月の閣議決定に向けた新しい食料・農業・農村基本計画の策定を検討する食農審企画部会が10月2日に開かれ、議論が本格化した。
農水省の食農審企画部会
今回の基本計画は改正された食料・農業・農村基本法のもとでの初めての計画となる。
この日の企画部会では改正基本法に盛り込まれた「国民一人一人の食料安全保障」と「持続可能な食料システム」に関わる分野として▽食品アクセス、▽食品安全・消費者の信頼確保、▽食品産業、▽合理的な価格形成について、農水省が課題と検討の視点を説明したのち、意見交換した。
食品アクセスについては店舗がなくなるなど物理的な理由による買物困難者についての調査や対策が行われていない市町村が10%以上あることから、農水省は民間事業者を含めたラストワンマイル物流の確保促進が必要だとした。
また、経済的困窮者に対する対策では子ども食堂やフードバンクなどの機能の強化を挙げた。
食品安全では「後始末より未然防止」の考え方でのリスク管理の推進、食品表示の適正化を挙げた。
食品産業については、輸入リスクが高まっていることから国産原料の利用促進に向けた農業者との連携強化、共同物流拠点の整備と鉄道・船舶を利用した輸送などのモーダルシフトの推進と、国際的に高まる環境や人権、栄養への配慮への対策が必要とされた。
合理的な価格形成では品目別のコストの見える化や、消費者や関係者の理解醸成などが課題として挙げられた。
JA全中の山野会長はJAが移動購買車で食品を提供しているのは103JAあり、子ども食堂も200JAが取り組んでいるが、人手不足で運営も厳しく、省庁横断的な後押しが必要だと述べた。
食品産業と農業との連携は国内生産の増大とフードマイレージの削減など環境負荷低減のためにも必要だと提起したほか、物流問題では産地の集出荷施設の改修など施設への支援の「抜本的な拡充」を求めた。
合理的な価格形成の法制化については、米や野菜など幅広い品目を対象にし、価格形成の実効性を確保するためには関係者の合意だけではなく、「国の一定の関与が必要」とした。
食品アクセスについて農村、とくに中山間地域では「スーパーの撤退が目につく」といった現状を複数の委員が指摘したほか、高齢化が進めば食材を手に入れても「料理ができない人が増える」として、地域で食材づくりを配食を行う顔の見える関係も必要だとする意見もあった。
一方、複数の委員からは地域で自発的に取り組みが進んだ子ども食堂や
フードバンクの機能強化は「根本的な課題解決ではない」との意見や「フードチェーンに位置づけるには違和感がある」との指摘も出た。また、米国のフードスタンプなど食料支援策が日本でも必要との意見もあった。
合理的な価格形成については消費者の目線で検討する必要があるとの意見の一方、「農業者は本当にぎりぎりの状況で(農業を)やっている。営農の立場で考えることが大事だ」との声や、コスト上昇による価格引き上げを取引先になかなか理解してもらえない加工業の実態なども指摘された。
そのほか齋藤一志日本法人協会の会長は米の生産について、現場では来年からは生産抑制をやめようという声が出ているとして「足りないものを作る政策への転換」が必要だとした。
次回は10月16日に環境と調和した食料システムなどをテーマに開く。
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