「農村女性の地位向上に関するアンケート」農村女性の長時間労働深刻化 農民連女性部調査2024年10月16日
農民連女性部はこのほど「農村女性の地位向上に関するアンケート」結果を公表した。農業収入が減少するなか、農村女性の長時間労働が深刻化しており、「ジェンダー平等に相反する状況に拍車がかかっている」としている。
調査は4月から9月にかけてアンケート用紙を配布・回収して実施し、47都道府県630人の回答を集計した。
回答者の7割が60~70代。農民連によると2016年に同様の調査を実施したが、その際の回答者は50~60代が7割を占めたことから、そのまま高齢化が進んだとしている。
経営品目は多い順に野菜、米、果樹、畜産などとなっている。専業農家が77%だった。
1日の労働時間は「8時間以上」が約6割。このうち10時間以上は16.7%だった。
家事の労働時間も3時間が29%、4時間が17%など長時間で家事の休日は「なし」が半数以上だった。これに対して夫の家事時間はゼロが30.8%、1時間は36.9%となったが、毎日家事をする夫や一日4時間以上も約1割で人により差が大きい。
「忙しすぎる。自分の時間がない」、「休みがない。夫は自分も休みがないので当たり前と思っている」(40代・米、野菜)、「農作業と地域との付き合いとの両立で忙しすぎる」(50代・野菜)などの声が寄せられている。
今回の調査では夫の労働時間は聞いていないため、家事時間は短くても労働時間は男性のほうが長いこともは「多々あると推察される」としており、問題は「長時間労働が深刻化するなかでも性別役割分担が固定化され、女性の困難が当然視されること」だと農民連女性部は指摘している。
農業収入については「減った」が49.8%え「増えた」は10.2%。「お金がない。経営が苦しい。生活費がない」や借金の返済など経営と生活資金に関する悩みは多数寄せられたほか、「収入が7割減少。機械、肥料、農薬など値上がりのため利益が取れない赤字状態」(60代・花木)、「2400万円も減収。継続できるか」(60代・畜産)となどの声が上がっている。
収入減少への対処方法として若い世代ほど、「規模拡大」、「作目の変更」が多い。しかし、「忙しすぎる」との声も多数で「規模拡大→長時間労働」となり、さらに女性には家事労働はなくならないため「自分の時間がない」という訴えにつながっている、としている。
一方、高齢の生産者では資材高騰で「作付けを減らす」、「生産をやめた」という回答も多く、農業生産を縮小、あるいはあきらめた人も少なくないことが浮かび上がった。
ただ、約半数の47%の女性が農業経営の財布を管理しており、農業労働の対価についても46%が「自分で管理している」としており、また、「月ぎめ」で対価をもらっている女性は15%いることから、農村女性のジェンダー平等にとっては「重要な前進」と評価している。
一方で5.7%の女性が農業労働の対価はないと答え、23%の女性が「自身の資産はない」としており、長時間労働をこれだけしながらも自分で使える金がないというのは「家父長制のなごりともいえるのではないか」と指摘している。
自分の地域に女性の農業委員や農協理事がいるかを聞いたところ「いない」が69.9%で女性参画の歩みは遅いことが浮かび上がったが、農民連女性部は「その背景には農村女性が忙しすぎて社会的な活動に参加する余裕がないことが指摘できる」としている。
そのうえで経営規模の大小や年齢で区別せず、農村女性の困難に寄り添った実態調査が必要だと提起している。
重要な記事
最新の記事
-
日本人と餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第331回2025年3月7日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「コメ騒動」の原因と展望~再整理2025年3月7日
-
(425)世界の農業をめぐる大変化(過去60年)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月7日
-
「とやまGAP推進大会」に関係者約70人が参加 JA全農とやま2025年3月7日
-
新潟県産チューリップ出荷最盛期を前に「目合わせ会」 JA全農にいがた2025年3月7日
-
新潟空港で春の花と「越後姫」の紹介展示 JA全農にいがた、新潟市2025年3月7日
-
第1回ひるがの高原だいこん杯 だいこんを使った簡単レシピコンテスト JA全農岐阜2025年3月7日
-
【スマート農業の風】(12)ドローン散布とデータ農業2025年3月7日
-
小麦ブランの成分 免疫に働きかける新機能を発見 農研機構×日清製粉2025年3月7日
-
フードロス削減へ 乾燥野菜「野菜を食べる」シリーズ発売 農業総研×NTTアグリ2025年3月7日
-
外食市場調査1月度市場規模は3066億円2019年比94.6% コロナ禍以降で最も回復2025年3月7日
-
45年超の長期連用試験から畑地土壌炭素貯留効果を解明 国際農研2025年3月7日
-
日本赤十字社のプロジェクト「ACTION!防災・減災」に参加 コープみらい2025年3月7日
-
健康増進へ野菜摂取レベルなど競う企業対抗企画 タキイ種苗が優勝2025年3月7日
-
フルーツピークス横浜ポルタ店2周年記念 いちごの超豪華パフェや感謝価格のタルト登場2025年3月7日
-
EVトラックの最適充電マネジメントシステムサービスを提供開始 グリーンコープ生協くまもと2025年3月7日
-
「金芽米」活用で市職員の花粉症予防・改善にチャレンジ 大阪・泉大津市2025年3月7日
-
台湾へのイチゴ輸出を本格化 JAかみましき2025年3月7日
-
道の駅「明治の森・黒磯」で「手塚さんちの長ねぎドレッシング」新発売2025年3月7日
-
鳥インフル 米デラウェア州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年3月7日