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果樹産地消滅の恐れ 農家が20年で半減 担い手確保が急務 審議会で議論スタート2024年10月23日

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農林水産省は10月17日に食農審果樹・有機部会を開き、小里農相が新たな果樹農業振興基本方針を検討するよう諮問した。今後、部会は現地調査をふまえて議論し来年3月に審議会として答申する。

食味に優れ栽培しやすいカラムナー性のりんご「紅つるぎ」(写真提供:農研機構)

食味に優れ栽培しやすいカラムナー性のりんご「紅つるぎ」(写真提供:農研機構)

脆弱化する果樹生産基盤

現行の基本方針は2020年4月に策定したもので、低下した供給力を回復し生産基盤を強化するための施策に転換する、とした。

しかし、栽培面積は2023年で19.4万haと10年で3.6万ha減少し生産量は10年で59万t減少し2023年は245万tとなった。

ただ、高い品質が評価され国産果実の卸売価格は上昇し、2013年に309円/kgが2023年には467円/kgとなっている。ただ、販売農家は20年で半減し17万戸となり、そのうち65歳以上が7割を占める。そのため高品質な果実が評価されても卸売量は減少、国内生産が需要に応えきれていない状況にある。

【野沢校正済】〈画像 果樹園〉(野沢)果樹農業振興基本方針策定へ-9.jpg

担い手確保は喫緊課題

担い手の育成と確保は喫緊の課題だが、果樹産地の7割が担い手確保の見込みがないという。新規就農の確保も課題だが、せん定など高度な技術が必要であり、苗を植えてから収穫するまで数年が必要でその間の収入確保をどうするかというハードルもある。

そのためJAなどが離農者の園地などを居抜きで分譲園地として整備し、新規就農者を研修を受け入れ、研修後はそのまま就農する「果樹型トレーニングファーム」の取り組みも行われている。農水省の調査では全国566産地協議会のうちトレーニングファームを設置しているのは45協議会となっている。和歌山県のJA紀の里では「あら川の桃部会」が中心となって継承可能な園地を把握し、部会員が研修サポーターとなって新規就農者を育成、2015年から研修生8名を受け入れ5名が就農しているという。

担い手確保だけでなく、機械ではなく人の手によるせん定や摘果・受粉管理、収穫には多くの労働力を必要とするというピーク期が存在することから、労働力確保が規模拡大のネックになっている。

さらに、永年性作物である果樹は気候変動による高温の影響が当年度だけでなく長期に及ぶことも踏まえた対策が必要になっていることや、中国に頼っていた輸入花粉が同国で火傷病が発生したことによって禁輸となった問題など、苗木や花粉も国内生産を基本とすることが課題となっている。
農水省は、今後の総人口の減少で果実の需要減少も見込まれるが、「担い手の減少による生産量の減少はそれ以上のペースで進む可能性が大きい」として、担い手を確保して産地を維持し需要に応えていくためには、園地の規模拡大と機械が入れるような傾斜の修正などの基盤整備と、V字ジョイント栽培など省力樹形への改植・新植、さらにスマート機械の開発、導入を集中的に進めることが必要だと提起した。

所得向上が就農者増やす

部会では委員の神農佳人JA長野中央会会長が果実の単価は堅調だが、雇用経費が高騰しているなどの実態を指摘し、「再生産可能となる振興方針を策定してほしい」と述べるとともに、果樹生産者自らが加工に取り組みことはコストがかかるとして疑問視し、「農協への生果の出荷で1億円を売り上げる若い生産者もいる」として、離農した農地の集約し大規模経営をめざすことも必要だと強調した。

全国果樹研究連合会の寺地政明会長はV字ジョイント栽培は新規参入のハードルを下げる技術で3年で初収穫が得られることから「地元では若者が楽しいと言っている」と話す。また、人手不足で選果ができなければ出荷できないことから生産基盤は選果場も含めて考えるべきだとし、AI選果機の導入と選果場の集約も検討すべきと指摘した。

熊本県果樹研究会女性部に所属する中山まゆみ委員は、中山間地では園地への土砂の流入など自然災害の被害もあり、後継者不足のなかでは基盤整備が必要だと強調した。基盤整備が進んだ園地では地域のつながりも強まり、優良品種の導入と労働時間の削減なども実現しつつあるという。ただ、課題は老朽化した選果施設。施設更新への支援策と、消費地から遠い産地には出荷拠点の設置が求められているとした。

東京青果の高羽馨常務は「生産者の所得を上げるための価格を意識してきた。しかし、単価は上がっても担い手減少に歯止めがかかっていない」と危機感を募らせ、基本方針の実施期間は「5年では短い」として10年以上先を見据えた政策を検討すべきだと提起した。

部会長に選任されたのは弁護士の林いずみ氏。林部会長は「現行基本方針が分析た状況と変わらず、加速度的に厳しくなっているのではないか」として50年先を見据えたわが国果樹農業像をどう描くかも問われていると指摘した。

部会は11月22日に長野県の先進産地を現地調査、12月17日の第2回部会で課題と論点の整理を示し議論する。

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