11月施行のフリーランス法 農業分野ではここに注意 ②デザイナーに直売所の販促パンフレット制作を頼んだら2024年10月31日
多様な人材の活用が進む農業分野にも関わってくるのが、11月1日施行のフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)だ。どんなルールが課せられるのか。具体例から考える。
11月施行のフリーランス法 農業分野ではここに注意 ①「知らない」がリスクに
企業等とフリーランス(個人事業主)との取引適正化、就業環境整備のため、フリーランス法では、発注側の従業員の有無と契約(取引)期間ごとに数パターンに分け、パターンごとにルールを課していく。
ここでは、A農業法人が直売所とネットで販売する地域の特産物と加工品のPRのため、JAのイベントで出会った地元のデザイナーひろみさんにパンフレット制作を委託することにした。12月1日に契約し、納期は翌年2月1日。春夏野菜や果実、果実で作るジャムとゼリーの魅力を訴求するのが狙いだ。
ひろみさんが他人を雇わず1人で仕事をしていたら、フリーランス法の保護対象となる。個人事業主だけでなく一人社長も対象だ。
発注側が、週20時間以上かつ継続して31日以上を雇用が見込まれる従業員を1人以上雇用していたら、「特定業務委託事業者」として規制対象となる。農業法人やJAはもちろん、あてはまる。
「特定業務委託事業者」の多くは会社なので、ここでは会社等と呼ぶ。会社等がフリーランスに仕事を頼む際には、「書面等による取引条件の明示」「期日(納品から60日以内)の報酬支払い」「募集情報の的確表示」「ハラスメント対策に係る体制整備」がフリーランス法上の義務になる(このうち「取引条件明示」だけは、個人が個人に発注する際にも課される)。
A法人の総務課長はひろみさんに、「2月中にパンフレットを完成させたいからデータの納品は2月1日ね。内容はお任せするけどセンス良くね。予算がないんで、報酬は10万でお願い」と口頭で発注した。ありがちだが、この依頼はフリーランス法にふれる。フリーランス法が適用になる取引では、発注者は書面(紙)か電磁的方法(電子メール等)で、互いの名称、委託日、給付(仕事)内容、納品日と場所、報酬額と支払期日等を伝えなければならない。発注時に未定のことがあれば、決まり次第、やはり書面か電磁的方法で伝える。
報酬の支払い期日は、納品から60日以内にする。パンフレットなど物の制作の場合、完成から60日でなく、その仕事をした人の納品から60日、がポイントだ。募集にウソや誤解を招く表現はNG。ハラスメントをしてはいけないという方針を作って法人に関わる人に知らせ、相談窓口(外部委託も可)を設け、ハラスメントが起きたら事実確認の上、適切な対応を取る。
ここまでは単発の委託や短期間の委託でも義務だが、A法人とひろみさんとの取引は「1ヵ月以上の業務委託」にあたるため、「7つの禁止行為」も課される(詳細は第3回参照)。
ひろみさんが手がけたパンフレットは評判が良く、特産品や加工品の売り上げも伸びたため、A法人では、秋冬版のパンフレットやホームページのリニューアルも委託することにした。契約期間が「6ヵ月以上」となったので、上記に加え「育児介護等と業務の両立に対する配慮」「中途解除等の事前予告・理由開示」もA法人に課される。
出版社勤めだったひろみさんは、出産を機にUターン。子育てしながら、デザイナーの仕事をフリーランスとして再開した。A法人が子育ての事情も配慮、調整してくれたため、ひろみさんは気持ちよく働け、A法人の売り上げも伸びていった。
フリーランス法が契約(取引)期間によってルールのレベルを変えるのは、フリーランスという形であっても、人に長く働いてもらう際には気を配るべき事柄が増えるという常識とも合っている。
従業員の有無、取引(契約)期間ごとに変わる「守るべきこと」
【次回】
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