米の価格形成 コスト考慮した仕組みづくり議論へ WGが初会合2024年11月6日
コストを考慮した農産物の価格形成の仕組みづくりを検討している農水省の「適正な価格形成に関する協議会」は、米についても検討するWGを設置し、11月5日に初会合を開いた。
農水省で開かれた米WGの第一回会合
コストを考慮した価格形成の仕組みは、生産や製造にかかる費用を把握して買い手に対して説明、それをもとに価格交渉するなどによって、双方合意のもとで価格を決定するというもの。価格形成は需給と品質を基本としつつ、売り手から説明のあった費用を考慮することを法制度化するよう農水省は検討しており、来年の通常国会の提出をめざす。
対象となる品目は、供給の持続可能性が懸念されるもの。米についても供給の持続性に支障が生じているかについて関係者が合意することが仕組みづくりの前提となる。
農水省は米の作付けは、規模拡大など生産性向上によるコスト削減が難しい中山間地域が3分の1を占めることWGに示した。それによると60kg当たりの生産費は平地農業地帯では1万3620円だが、中間農業地域では1万8028円、山間農業地域では1万8242円と平地にくらべて1.3倍となっている(2022年産)。
また、規模拡大にともなって生産コストは低下することから15ha以上の経営体は生産コストが相対取引価格を下回って収益が出ているが、コスト割れしている年もある。
一年一作の米は年産で価格形成されるが、生産資材価格は短期的に大きな価格変動が起きて経営を圧迫することもある。
最近では2022年の5月から7月にかけて2ヶ月で光熱動力費が29.5ポイント上昇した。
将来の米生産について、全米販は「米穀流通2040ビジョン」で2040年の米需要量を375万tと推計、一方で生産可能量を363万tと需要を賄えない生産力となると見通している。
この日の会合では生産・集荷団体からは米生産の持続性が危うくなっているとして適正な価格形成の仕組みづくりが大切だが、現状ではコストを説明しても価格交渉では考慮されないなどの実態が指摘された。
卸業者からは、米不足のときはコストを考慮するものの過剰のときは考慮しないのが実態で、今後は生産者のコストも取引先に説明をしていく必要があるなど意見や、実需者からは今後は持続可能性を考えていかなければならないとの声もあった。
一方、小売業者のなかには価格転嫁によって米離れが加速するとの指摘や消費者団体からはコストを考慮しても急激な価格上昇は消費者にとって打撃となるなど懸念もあった。
今後は米の生産コストの把握などによって、持続的な供給に支障が生じているデータなどを示し、コスト指標としてどれを活用するかを議論していくことになる。
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